カテゴリー「サイエンス」の35件の記事

2020年5月 2日 (土)

共振器QED

ドレスト光子の本を読んでいると引っ掛かる所が幾つも有りますが、その1つが、

  • ドレスト光子は、考えている領域がその波長より小さいため、共振器を想定出来ない。

旨の記述です。私には、当初、その意味を汲み取ることが出来ませんでした。実は、共振器QED(量子電気力学)なるものが有ることを最近になって知りました。単純に解釈すると、共振器の内側でQEDを考えようというものです。その共振器QEDがドレスト光子以前に研究されていたので、それを踏まえて、ドレスト光子では「共振器が想定出来ない」という記述がなされたのだと思います。そこで、その共振器QEDについて、少し調べてみました。

まず、(光)共振器を一言で言うと、それは向かい合った1対の鏡のことです。その鏡に挟まれた空洞内で光は条件次第で定在波を形成して共振します。

向かい合った1対の鏡とその間の光

例として半導体1次元微小共振器を見てみると、その構造は、量子井戸(Quantum Well: QW)や量子ドットといった半導体発光層を持つ共振層を屈折率の異なる同種の半導体多層膜による DBR( Distributed Bragg Reflector:分布ブラッグ反射鏡)で挟んだものになっています。

共振器QEDは、そのような光共振器内で光と電子・正孔対(励起子)の相互作用を扱う学問(研究)分野です。共振器内では、光と励起子の相互作用を光子1個レベルで操ることが出来るようです。その光と励起子は強く相互作用することが出来、量子情報通信への応用が期待されるとのことです。そのような系を扱うのが共振器QEDと言うわけです。 YouTube に次の動画が有りました。

因みに、光と励起子が強く相互作用した状態が励起子ポラリトン(共振器ポラリトン)です。ドレスト光子と励起子ポラリトンは別物ですが、励起子ポラリトンや共振器QEDに関する知識が有れば、ドレスト光子の本を読んだ時に理解が捗っていたことでしょう。

ところで、物性に不勉強な私は、光が質量を持つことを知った時は驚いたものですが、物性界隈では光が質量を持つのは常識なのだろうなと思う今日この頃です。

2020年3月29日 (日)

LASSO に関する幾つかの補足

当ブログに LASSO に関する記事が有りますが、ここでは表題の通り、 LASSO に関する幾つかの補足を書きたいと思います。

LASSO や否や?

スパース・モデリングは LASSO だけではない では、説明変数がスパースになることの説明で用いられる図が2種類有ることを書きました。

LASSO 最小二乗推定値
\(\beta_1\)
\(\beta_2\)
\(l_1\)ノルム最小化
\(\beta_1\)
\(\beta_2\)

その記事を書いた後で、図の \(l_1\) ノルム最小化の方も LASSO と言うのではないかという疑問が生じて、ずっと気になっていました。今も確証は持てないのですが、おそらく \(l_1\) ノルム最小化の方は LASSO とは言わないと思います。次の記事が参考になります。

スパースモデリングはなぜ生まれたか? 代表的なアルゴリズム「LASSO」の登場

この記事から、私は

  • データにノイズが混入している場合に \(l_1\) 正則化項を用いて最適化する方法を LASSO と呼ぶのに対して
  • 劣決定系に対する最適化(すなわち図の \(l_1\) ノルム最小化)はノイズの無い場合の話しで、 LASSO の前段階の理論である

と理解しました(自信は無いですが)。

L1 ではなく \(l^1\) ・・・、でも \(l_1\)

スパースモデリングに関するインターネット上の記事のほとんどで、有限次元ベクトル \(v\) のノルム

\[ \|v\|_1 = \sum |v_i| \]

を L1 ノルムと表記し、これを用いた正則化を L1 正則化と呼んでいます。しかし、これは大文字の L ではなく、小文字の \(l\) で表記するべきです。大文字で表記するのは、関数 \(f\) のノルムです。

\[ \|f\|_1 = \int |f(x)|dx \]

そんな訳で、当ブログでは 「L1 正則化」ではなく 「\(l_1\) 正則化」と表記しています。

ところが、最近気付いたのですが、 \(l_1\) ではなく、 \(l^1\) が正しい表記でした。したがって、本当は 「\(l^1\) 正則化」とすべきでしょう。でも、上付き添え字だと指数と間違える恐れも有るので、下付きの 「\(l_1\) 正則化」で行くことにします。

ところで、多くの記事で 「L1 正則化」と表記されている理由は、これが小文字だと 「l1 正則化」となってアルファベットの「l (エル)」と「I (アイ)」そして数字の「1」が区別しにくいからだろうと思っています。普通のフォントでは仕方ないですね。当ブログでは MathJax のおかげで「\(l\)」が識別出来るので小文字で表記出来るのでした。

2020年2月11日 (火)

\(f(x)\) のとりうる値の範囲

次の動画で疑問に思った事柄が有ります。

YouTube:最大値と最小値,とりうる値

この動画の中で疑問なのは、次の文言です。

\[ f(x) のとりうる値の範囲は\ 1\leq f(x)\leq 2 \tag{1} \]

これを動画では

\[ f\ は区間 [1,2] への全射を意味する \tag{2} \]

のようなことを言っています。普通の日本語の感覚では、「とりうる」は区間 \([1,2]\) 全部に対応する必要は無く、

\[ f(x)\not\lt 1\ 且つ\ f(x)\not\gt 2 \tag{3} \]

と同じ意味だと思うのですが、動画では「それは違う」とのことです。

(1) を少し変えて、 (4) のように言うと \(f\) は全射になるような気もしないでも無いような、有るような・・・。

\[ f(x) は\ 1\leq f(x)\leq 2\ の範囲をとりうる \tag{4} \]

とにかく、(2) の意味を表したいのなら、

\[ f(x) のとる値の範囲は\ 1\leq f(x)\leq 2 \tag{5} \]

と言えば良いでしょう(すなわち、「とりうる」ではなく「とる」で良い)。なぜ、わざわざ「うる」を付けるのでしょうか?

ここで私の想像なのですが、外国語、例えば英語で 「can」 とか 「be able to」とかが使われていて、それをそのまま日本語に訳して「とりうる」となったという可能性も有りそうです。もしかしたら、 「can」あるいは 「be able to」 だと (2) の意味になるのかも知れません。そこで、 「can」 と 「be able to」 を少し調べてみたのですが、判りませんでした。参考までに、下記リンクを載せておきます。

2020年2月 2日 (日)

ラグランジアン、お前は何者だ!?

ラグランジアンに最小作用の原理を適用すると運動方程式が導びかれます。このラグランジアンは何者なのか考えてみたいと思います。

ラグランジアンはベクトルのノルム(の2乗)であって欲しい

非相対論ではラグランジアンは式 (1) です。

\[ L = T - U \tag{1} \]

運動エネルギー \(T\equiv m\dot{x}^2/2\) はベクトルのノルム(の2乗)なので解り易いのですが、ポテンシャル項が有るためにラグランジアンは解りにくいものになっています。ポテンシャルとは何なのでしょうか。

ベクトルを空間成分に限定せずに時間成分も考えれば、ベクトルのノルムのアイデアの範囲で式 (2) のようにラグランジアンにポテンシャルらしきものを導入することは出来そうです。

\begin{align} Ldt &= \alpha\sqrt{dx^2 + \psi^2dt^2} \\ &= \alpha\sqrt{\dot{x}^2 + \psi^2}dt \\ &\fallingdotseq \alpha\left(\psi + \frac{1}{2\psi}\dot{x}^2\right)dt \tag{2} \end{align}

実は、相対論では同様な考えでラグランジアンが決定されています。実際、式 (3)

\[ Ldt = -mc\sqrt{-g_{\mu\nu}dx^\mu dx^\nu} \tag{3} \]

が相対論のラグランジアンで、これを非相対論近似すると式 (4) になります。

\[ Ldt = \left(-mc^2 + \frac{m\dot{x}^2}{2} - m\phi\right)dt \tag{4} \]

ただし、式 (4) の \(-m\phi\) は相対論⇔非相対論間の辻褄を合わせるために導入した後付けの項ですが。

ラグランジアンは何故ポテンシャルを引いているのか?

上記のことから、ラグランジアンにポテンシャル項が有るのは良しとして、次の疑問は、そのポテンシャルは式 (1) のように何故引かれているのかということです。もし、ポテンシャルを足しているのであれば、全エネルギーという解釈が出来てスッキリするのですが、そうはなっていません。

全エネルギーに相当するのはハミルトニアン(式 (5))です。

\[ H = T + U \tag{5} \]

このハミルトニアンを式 (6) で表されるルジャンドル変換をすることでラグランジアンを得ることが出来ます。式 (6) の結果、ラグランジアンはポテンシャルを引いていることが理解できます。

\begin{align} L &= p\dot{x} - H \\ &= T - U \tag{6} \end{align}

では、ラグランジアンとハミルトニアンの違いは何でしょうか。ラグランジアンは最小作用の原理で運動方程式を導くことが出来ます。一方、ハミルトニアンは、最小作用の原理を適用しようとしても運動方程式は導けないと思います。それは以下の考察から言えるでしょう。

ラグランジアンの変数は、位置 \(x\) と、その時間微分 \(\dot{x}\) です。2種類目の変数が1種類目の変数の時間微分であるところがミソです。このお蔭で、 \(\dot{x}\) の変分 \(\delta\dot{x}\) は部分積分によって \(\delta x\) に置き換えることが出来ます。その結果、運動方程式 (7) が導かれる訳です。

\[ \frac{d}{dt}\frac{\partial L}{\partial\dot{x}} - \frac{\partial L}{\partial x} = 0 \tag{7} \]

一方、ハミルトニアンは、その変数が位置 \(x\) と運動量 \(p\) です。このため、変分 \(\delta x\), \(\delta p\) を何か共通の変分 \(\delta w\) に置き換えることが出来ません(たぶん)。従って、ハミルトニアンに対して最小作用の原理を適用して運動方程式を導くことは出来ないということになります。それで、止むを得ず、ハミルトニアンをルジャンドル変換してラグランジアンを求め、そこから最小作用の原理で運動方程式を導くことになります。そのラグランジアンがポテンシャルを引いているのは式 (5) のハミルトニアンに由来しているという訳です。

2020年1月18日 (土)

私の相対論 -5-(ポアンカレ群)

\(-m^2\) によるポアンカレ群の分類

ポアンカレ群は時空の平行移動 \(a\) とローレンツ変換(回転) \(\varLambda\) で構成されます。それらのユニタリー表現を \(T(a)\), \(L(\varLambda)\) とします。このうちの平行移動 \(T(a)\) は \(T(a)T(b)=T(a+b)\), \(T(0)=1\) より

\[ T(a) = e^{ik_\mu a_\mu} \tag{1} \]

が判ります。ここに \(k_\mu\) はエルミート作用素です。ちょっと書き方が気持ち悪いのですが、 \(k_\mu\) が \(a_\mu\) に作用しているわけではありません。

ローレンツ変換と平行移動の間には式 (2) の関係が有ります。

\[ L(\varLambda)T(a) = T(\varLambda a)L(\varLambda) \tag{2} \]

これより、式 (3), (4) が得られます。

\begin{align} L(\varLambda)T(a)L(\varLambda)^{-1} &= T(\varLambda a) \\ &= \exp(ik_\mu\varLambda_{\mu\nu}a_\nu) \\ &= \exp[ia_\mu(\varLambda^{-1})_{\mu\nu}k_\nu] \tag{3} \\ L(\varLambda)T(a)L(\varLambda)^{-1} &= L(\varLambda)\exp(ik_\mu a_\mu)L(\varLambda)^{-1} \\ &= \exp[iL(\varLambda)k_\mu L(\varLambda)^{-1}a_\mu] \tag{4} \end{align}

(3)=(4) より式 (5) が得られます。

\[ L(\varLambda)k_\mu L(\varLambda)^{-1} = (\varLambda^{-1})_{\mu\nu}k_\nu \tag{5} \]

ローレンツ変換は長さを変えないことを考慮すると、式 (5) より式 (6) が得られます。

\begin{align} L(\varLambda)k_\mu k_\mu &= (\varLambda^{-1})_{\mu\nu}k_\nu L(\varLambda)k_\mu \\ &= (\varLambda^{-1})_{\mu\nu}k_\nu(\varLambda^{-1})_{\mu\rho}k_\rho L(\varLambda) \\ &= k_\mu k_\mu L(\varLambda) \tag{6} \end{align}

式 (6) および \(k_\mu\) は \(T(a)\) と可換であることより式 (7) が得られます。

\[ [k^2_\mu, L(\varLambda)] = [k^2_\mu, T(a)] = 0 \tag{7} \]

したがって、シューアの補題により既約表現において式 (8) が得られます。ここに \(\mathbf{1}\) は恒等作用素です。「-」は便宜上付けました(早い話 \(m\) は質量)。

\[ k_\mu k_\mu = -m^2\mathbf{1} \tag{8} \]

\(-m^2\) は \(k^2\) の固有値で、これが異なれば固有ベクトル(固有空間)も異なることから \(-m^2\) はポアンカレ群の既約表現を指定する1つのパラメータであることが言えます。この \(-m^2\) により既約表現は下記のタイプに分類出来ます。(符号は (- + + +))

  • [M]: \(-m^2<0\); \(\bar{k}_\mu=(\pm m,0,0,0)\) time-like
    • [M+]: \(\mathrm{sgn}(k_0)=1\); 粒子
    • [M-]: \(\mathrm{sgn}(k_0)=-1\); 反粒子
  • [0]: \(-m^2=0\); \(\bar{k}_\mu=(\pm 1,0,0,1)\) light-like
    • [0+]: \(\mathrm{sgn}(k_0)=1\)
    • [0-]: \(\mathrm{sgn}(k_0)=-1\)
  • [L]: \(-m^2=0\), \(k_\mu=0\); \(\bar{k}_\mu=(0,0,0,0)\) 真空
  • [T]: \(-m^2>0\); \(\bar{k}_\mu=(0,0,0,im)\) space-like

ローレンツ変換の分解

計算は省略しますが、ローレンツ変換は式 (8) のように分解することが出来ます。

\[ L(\varLambda)=Q(\varLambda, k)P(\varLambda) \tag{9} \]

ここに \(P(\varLambda)\) は式 (10) で定義される作用素です。

\[ P(\varLambda)|\bar{k}, \bar{\xi}\rangle = |\varLambda\bar{k}, \bar{\xi}\rangle \tag{10} \]

ここに \(\bar{\xi}\) は \(\bar{k}\) 以外のパラメーターで、気持ちはスピンです。また、 \(Q(\varLambda, k)\) は \(k_\mu\) と可換であることが省略した計算の中で判っています。

\(P(\varLambda)\) は式 (10) によって与えられ、 \(\bar{\xi}\) とは無関係なので、 \(Q(\varLambda, k)\) が決まればローレンツ変換のもとでの \(\bar{\xi}\) の振る舞いが判ることになります。その \(Q(\varLambda, k)\) を決定するために、ウィグナーによってリトルグループというものが導入されました。ポアンカレ群の既約表現は \(k_\mu\) の固有値 \(\bar{k}_\mu\) によって上記のタイプに分類されるわけですが、この \(\bar{k}_\mu\) を不変にするようなローレンツ変換の集合がリトルグループです。

そして、この先にリトルグループの計算という荒海が待っている訳ですが、それは省略して「私の相対論」はここで終了にしたいと思います。

私の相対論

特殊相対論に限って言うと、アインシュタインがどのように相対論を構成したのか私は知らないのですが、ミンコフスキーはアインシュタインの相対論を知って、それは時空の等長変換の理論であることを見抜きました。そしてウィグナーによってその等長変換すなわちポアンカレ変換の成す群が詳細に計算され、相対論的量子力学に応用されることになりました。これが、相対論に対する私の認識です。つまり、(特殊)相対論とはポアンカレ群の理論なのです。(「ポアンカレ群」と言うことは、ミンコフスキーよりもポアンカレの方が先に時空とその変換群を考えたということなのでしょうか?)

アインシュタインは当初、時空のアイデアには反対だったようですが、後に一般相対論を構築したということは、その頃には時空を受け入れていたのでしょう。

また、私にとっての一般相対論は不定計量のリーマン幾何学です。そのため、物理との対応を気にして来なかったのですが、今回、計量はどのように重力を表しているのかとか、重力波は何の波なのかということを調べてみました。(重力波については、重力波が初めて直接観測された頃に書きたかったのですが、手間取りそうだったのでパスしていました)

とにかく、相対論に対する私の認識(興味の方向)は、世間で言われているものとはズレていると思っています。天邪鬼な者としては本望です。

2020年1月 8日 (水)

私の相対論 -4-(重力場はゲージ場ではない??)

力を媒介するものは、大抵ゲージ場(接続)です。例えば QED の場合、微分 \(\partial_\mu\) が \(\partial_\mu - ieA_\mu\) に置き換えられることで光と荷電粒子との間に相互作用が導入されます。その時の\(A_\mu\) が光と言うゲージ場です。

では、重力の場合はどうでしょうか? 相対論の計量 \(g_{\mu\nu}\) も

\[ \partial_\mu \to \partial_\mu + g_{\mu\nu}\alpha^\nu \]

のような置き換えを満たすのでしょうか? いいえ、そんなことはありません。それでは、重力は仲間外れで、ゲージ場ではないということでしょうか?

計量 \(g_{\mu\nu}\) はゲージ場ではありませんが、この \(g_{\mu\nu}\) に一意に対応する接続(レビ・チビタ接続)が有ります。これについては、検索すれば幾つかヒットしますが、下記ページなどはどうでしょうか。

レビ・チビタ接続は相対論で馴染みの言葉で言うと、クリストッフェル記号に相当します。クリストッフェル記号 \(\Gamma^\mu_{\nu\iota}\) をゲージ場と呼んで良いのか、細かなことについては判りませんが、大きくは間違っていないと思います。この時、微分は式 (1) のような変更を受けることになります(\(V\) が任意階のテンソルについては省略)。

\[ \frac{\partial V_\mu}{\partial x^\nu} \to \frac{\partial V_\mu}{\partial x^\nu} - \Gamma^\iota_{\mu\nu}V_\iota \tag{1} \]

このクリストッフェル記号を計量 \(g_{\mu\nu}\) を用いて表すと式 (2) になります。

\[ \Gamma^\mu_{\nu\iota} = \frac{1}{2}g^{\mu\kappa}\left(\frac{\partial g_{\kappa\nu}}{\partial x^\iota} + \frac{\partial g_{\kappa\iota}}{\partial x^\nu} - \frac{\partial g_{\nu\iota}}{\partial x^\kappa}\right) \tag{2} \]

以上のように、 \(g_{\mu\nu}\) はゲージ場ではないが、ゲージ場(接続)との対応が取れることが判りました。すなわち、重力もゲージ場と見做すことが出来るわけです。これで、力はゲージ場によって媒介されるという信念を貫くことが出来ました。めでたしめでたし。

ところで、相対論で使われるクリストッフェル記号は下段の添え字に関して対称になっています。

\[ \Gamma^\mu_{\nu\iota} = \Gamma^\mu_{\iota\nu} \]

これは捩じれが無いことを意味しています(捩率0)。そこで、相対論に捩じれを導入したら、どのような変更をもたらすのかという疑問が出て来ます。それについては下記ページに少しだけ記述が有ります。四脚場というものを導入し、スピノルが扱えるようになるようです。

2020年1月 6日 (月)

私の相対論 -3-(一般相対論とニュートン重力との関係)

一般相対論は重力の理論と言われています。一方、ニュートン力学も天体同士に働く力(重力)を扱っています。そこで、両者の関係を見てみましょう。

計量とポテンシャル

ラグランジアン \(L\) を時間で積分したものは作用と呼ばれ、相対論では作用は世界間隔 \(ds\) を積分したものでもあります。

\[ S = \int Ldt = -\alpha\int ds \tag{1} \]

ここに \(\alpha\) は定数で、後で確定します。また、世界間隔 \(ds\) は次の式で与えられます。

\[ ds = \sqrt{-g_{\mu\nu}dx^\mu dx^\nu} \tag{2} \]

式 (2) の右辺に「-」が付いている理由は、よく判りません。たぶん、ルートの中が負になるのを嫌ったのでしょう。因みに、今回の符号は (- + + +) となっています。ちょっと横道に逸れますが、好みを言うと (+ - - -) で行きたかったのですが、参考にした本が (- + + +) なので、それに倣いました(符号を変えると間違えそうだから)。どうも、相対論では (- + + +) が主流のようです。

重力が無ければ式 (2) は

\begin{align} ds &= \sqrt{c^2dt^2 - d\boldsymbol{x}^2} \\ &= c\sqrt{1-\frac{v^2}{c^2}}dt \tag{3} \end{align}

となります。これを式 (1) に代入すると、式 (4) が求まります。

\begin{align} L &= -\alpha c\sqrt{1-\frac{v^2}{c^2}} \\ &\fallingdotseq -\alpha c + \frac{\alpha v^2}{2c} \tag{4} \end{align}

式 (4) の右辺第2項は非相対論的ラグランジアンに相当し \(mv^2/2\) となるべきものです。したがって \(\alpha=mc\) であることが分かり、ラグランジアンは式 (5) となります。

\begin{align} L &= -mc^2\sqrt{1-\frac{v^2}{c^2}} \\ &\fallingdotseq -mc^2 + \frac{mv^2}{2} \tag{5} \end{align}

式 (5) に弱い重力場 \(\phi\) を追加すると式 (6) になります。

\[ L = -mc^2 + \frac{mv^2}{2} - m\phi \tag{6} \]

これを式 (1) に代入すると \(ds\) と \(dt\) の関係が求まります。

\[ ds = \left(c - \frac{v^2}{2c} + \frac{\phi}{c}\right)dt \tag{7} \]

この両辺を2乗してから \(c\to\infty\) で \(0\) になる項を落とすと、式 (8) が求まります。

\[ ds^2 = (c^2 + 2\phi)dt^2 - d\boldsymbol{x}^2 \tag{8} \]

式 (2), (8) より計量テンソルの成分 \(g_{00}\) が求まります。

\[ g_{00} = -1 - \frac{2\phi}{c^2} \tag{9} \]

ポテンシャルの決定

上で計量とポテンシャルの関係が求まったので、次にそのポテンシャルの形を求めます。そのために場の方程式 (10) を計算します。

\[ {R^\mu}_\nu = -\frac{8\pi G}{c^4}\left({T^\mu}_\nu - \frac{1}{2}\delta^\mu_\nu T\right) \tag{10} \]

今は運動エネルギーが十分小さい状況を考えています。その場合、式 (10) においてエネルギー・運動量テンソルは式 (11) になります。

\[ T_{\mu\nu} = \rho c^2 u_\mu u_\nu \tag{11} \]

ここに \(u_\mu=dx_\mu/ds\) は4元速度で、 \(u^\mu u_\mu=-1\) を満たしています(単位ベクトルのようなもの)。 \(\rho\) は質量密度です。すなわち、式 (11) は静止エネルギーのようなものです。速度が小さいとしているので、 \(u_\mu\) の空間成分は無視し、時間成分だけが \(u_0=-u^0=-1\) として残ります。したがって式 (12), (13) が得られます。

\begin{align} {T^0}_0 = -\rho c^2 \tag{12}\\ T = {T^\mu}_\mu = -\rho c^2 \tag{13} \end{align}

式 (10), (12), (13) より式 (14) が得られます。

\[ {R^0}_0 = -\frac{4\pi G}{c^2}\rho \tag{14} \]

\(R_{00}\) は一方で式 (15) でも表されます。

\begin{align} R_{00} =& \frac{\partial\Gamma^\iota_{00}}{\partial x^\iota} - \frac{\partial\Gamma^\iota_{0\iota}}{\partial x^0} \\ &+ \Gamma^\iota_{00}\Gamma^\kappa_{\iota\kappa} - \Gamma^\kappa_{0\iota}\Gamma^\iota_{0\kappa} \tag{15} \end{align}

式 (15) の右辺第2項は \(x^0=ct\) での微分になっていますが、これは \(c\) で割ることになり、空間座標 \(x^i\) での微分に比べて小さくなるので、第2項は無視します。また、右辺第3, 4項も無視するようですが、これについては理由が判りません。とにかく、式 (15) は次式になります。

\[ R_{00} = \frac{\partial\Gamma^\mu_{00}}{\partial x^\mu} \tag{16} \]

\(\Gamma^\mu_{00}\) の計算も \(x^0=ct\) での微分を無視し、式 (9) も考慮すると式 (17) になります。

\begin{align} \Gamma^\mu_{00} &= \frac{1}{2}g^{\mu\nu}\left(\frac{\partial g_{\nu 0}}{\partial x^0} + \frac{\partial g_{\nu 0}}{\partial x^0} - \frac{\partial g_{00}}{\partial x^\nu}\right)\\ &= -\frac{1}{2}g^{\mu j}\frac{\partial g_{00}}{\partial x^j}\\ &= \frac{1}{c^2}g^{\mu j}\frac{\partial\phi}{\partial x^j} \tag{17} \end{align}

式 (16), (17) より

\[ {R^0}_0 = -R_{00} = -\frac{1}{c^2}\Delta\phi \tag{18} \]

式 (14), (18) より、ポテンシャル \(\phi\) の方程式が得られます。

\[ \Delta\phi = 4\pi G\rho \tag{19} \]

式 (19) を満たすポテンシャルで質量 \(M\) の粒子(質量密度 \(\rho\) が1点に集まったもの)の作るものは式 (20) となり、これはニュートンの重力であることが分かります(式 (6) でポテンシャル項は \(m\phi\) となっていることに注意)。

\[ \phi = -\frac{GM}{r} \tag{20} \]

2019年12月28日 (土)

私の相対論 -2-(重力波は何の波?)

基礎物理において「xx波」とは

\[ \Box\ \xi=0 \]

を満たす \(\xi\) を言います。例えば電磁波の場合、 \(\xi\) は電磁ポテンシャル \(A_\mu\) になります(電場 \(\boldsymbol{E}\) や磁場 \(\boldsymbol{H}\) も方程式を満たす)。では、重力波の場合の \(\xi\) は何なのか。その辺のところを確認して行きたいと思います。

重力場の方程式は式 (1) です。

\[ R_{\mu\nu} - \frac{1}{2}g_{\mu\nu}R = \frac{8\pi G}{c^4}T_{\mu\nu} \tag{1} \]

特に真空では式 (2) が成り立ちます。

\[ R_{\mu\nu}=0 \tag{2} \]

そこで、重力波が何なのかを見るため、真空中の弱い重力場の方程式を導くことにします。その状況のもとでは計量 \(g_{\mu\nu}\) はミンコフスキー計量 \(g^{(0)}_{\mu\nu}\) と小さな補正 \(h_{\mu\nu}\) で表すことが出来ます。

\begin{align} g_{\mu\nu} &= g^{(0)}_{\mu\nu} + h_{\mu\nu} \\ g^{\mu\nu} &= g^{(0)\mu\nu} - h^{\mu\nu} \tag{3} \end{align}

これを曲率テンソル

\begin{align} R_{\mu\nu\iota\kappa} = \frac{1}{2}&\left(\frac{\partial^2g_{\mu\kappa}}{\partial x^\nu\partial x^\iota} + \frac{\partial^2g_{\nu\iota}}{\partial x^\mu\partial x^\kappa}\\ - \frac{\partial^2g_{\mu\iota}}{\partial x^\nu\partial x^\kappa} - \frac{\partial^2g_{\nu\kappa}}{\partial x^\mu\partial x^\iota}\right)\\ &+ g_{\zeta\eta}(\Gamma^\zeta_{\nu\iota}\Gamma^\eta_{\mu\kappa} - \Gamma^\zeta_{\nu\kappa}\Gamma^\eta_{\mu\iota}) \tag{4} \end{align}

に代入し、 \(h_{\mu\nu}\) の1次より高い項を省略すると式 (5) になります。

\begin{align} R_{\mu\nu\iota\kappa} = \frac{1}{2}&\left(\frac{\partial^2g_{\mu\kappa}}{\partial x^\nu\partial x^\iota} + \frac{\partial^2g_{\nu\iota}}{\partial x^\mu\partial x^\kappa}\\ - \frac{\partial^2g_{\mu\iota}}{\partial x^\nu\partial x^\kappa} - \frac{\partial^2g_{\nu\kappa}}{\partial x^\mu\partial x^\iota}\right) \tag{5} \end{align}

これを式 (3) で縮約すると式 (6) が得られます。

\begin{align} R_{\nu\kappa} =& \ g^{\mu\iota}R_{\mu\nu\iota\kappa}\\ \fallingdotseq& \ g^{(0)\mu\iota}R_{\mu\nu\iota\kappa}\\ =& \frac{1}{2}\left(\frac{\partial^2{h^\mu}_\kappa}{\partial x^\nu\partial x^\mu} + \frac{\partial^2{h^\mu}_\nu}{\partial x^\kappa\partial x^\mu}\\ \ - g^{(0)\mu\iota}\frac{\partial^2h_{\nu\kappa}}{\partial x^\mu\partial x^\iota} - \frac{\partial^2h}{\partial x^{\nu\kappa}}\right) \tag{6} \end{align}

式 (3) において、 \(h_{\mu\nu}, h^{\mu\nu}\) は小さな補正という以外は具体的制限は課されていません。ここで式 (7) の制限を課すことにします。

\[ \frac{\partial{\psi^\mu}_\nu}{\partial x^\mu} = 0 \\ {\psi^\mu}_\nu = {h^\mu}_\nu - \frac{1}{2}\delta^\mu_\nu h \tag{7} \]

この制限によって、式 (6) は

\[ R_{\nu\kappa} = -\frac{1}{2}\Box\ h_{\nu\kappa} \tag{8} \]

となり、これは式 (2) より

\[ \Box\ h_{\nu\kappa} = 0 \tag{9} \]

となります。この方程式 (9) の解が重力波です。すなわち、重力波とは計量のことであるということが判りました。 LIGO は長さの変動を観測することで計量の変動を求めていることになります。

ところで、重力波はアインシュタインの最後の宿題とか言われていたようですが、それをニュートンの重力からは導けないものなのでしょうか? ブラックホールや中性子星が短周期で公転している時、そこから受ける重力が振動することから、それを重力波と言うことは出来ないのでしょうか? よく判らないので、これについては、そっとしておくことにします。

2019年12月25日 (水)

私の相対論 -1-(パラドックス)

相対論に対する私の認識は次のようなものです。

  • 特殊:ポアンカレ群(特にローレンツ群)の理論
  • 一般:リーマン幾何学(ただし、 1-3 の不定計量)

ただし、認識していると言っても、理解していると言えないのが残念なところです。かなり偏った認識なので、世間で話されている相対論の常識を最近まで必ずしも理解していませんでした。数年前に「100 分で名著」で相対論の回が有りましたが、そのとき納得したような事柄も有ります。そこで、勉強を兼ねて相対論について幾つかの話題をまとめてみようと思います。

今回は、相対論でのパラドックスについてです。なお、相対論では「××のパラドックス」と呼ばれている事例が有りますが、実際はそれらに矛盾は無いのでパラドックスと言うのは間違いです。が、慣例に倣ってパラドックスと呼ぶことにします。

宇宙線のパラドックス

ここに書いていることが宇宙線のパラドックスと呼ばれているかどうかは知りませんが、ここではそう呼ぶことにします。

宇宙線
パイ中間子
ミュー粒子
10~数十km

地球上空で大気に衝突した宇宙線は→中間子→ミュー粒子と変化して地上に到達します。ミュー粒子の到達までの時間はおよそ \(30\times 10^{-6}\sec\) です。しかし、ミュー粒子の寿命は \(2\times 10^{-6}\sec\) なので、途中で電子に変化するはずなのに、ミュー粒子のままで地上に到達します。この一見矛盾のように見えることも相対論で説明可能です。到達時間は \(30\times 10^{-6}\sec\) ですが、それは我々の時計での時間です。ミュー粒子は高速で飛翔しているので、地上到達までにミュー粒子にとっては寿命の \(2\times 10^{-6}\sec\) よりも短い時間しか経過していないのです。

いや、しかし、相対的に考えると、ミュー粒子から見れば我々の方の時間が遅くなり、ミュー粒子の時間は普通のままのはずです。上空から地上までの距離を移動するには寿命よりも長い時間が必要になるではないかと考えたくなります。しかし、ミュー粒子から見ると上空から地上までの距離はローレンツ収縮によって短くなり、そのため寿命内で到達出来るのです。高速で運動している物の時間が遅くなったり長さが短くなるのに気を取られて、その物体から見ると周りが縮むことを忘れがちになるので、矛盾していると勘違いしてしまいます。

双子のパラドックス

双子のパラドックスとは次のようなものです。双子の兄が宇宙旅行に行って帰って来た時、その兄は弟よりも若くなっています。しかし、相対的に見れば、弟の方が若くなっているとも考えられます。ここに矛盾が生じています。

この矛盾に対する説明でよく有るのは、旅行に行った兄は加速や減速(←これも加速のうち)をするので、兄の方が若くなり矛盾は生じないと言うものです。ところが、この加速度説に異を唱える意見が なぜこの宇宙ではウラシマ効果が起こるのか の中のコメントに有ります。それによると、地球に残っている弟には地球の重力 1G が常に掛かっているので、兄が同じ 1G の加速で旅行すると兄弟の時間経過は同じになるが、それは間違いだということです。

これについては一旦置いておいて、次の問題を考えます。

宇宙が球やトーラスのように閉じているとします。兄が宇宙を一周して地球に戻って来た時、弟よりも若くなっているか?

宇宙が閉じているので、兄は方向転換に伴う加速をすることなく地球に戻って来れます。それでも若くなっているのでしょうか?(出発と到着の加減速が無視できるかどうかは知りませんが)この問題に関して下記ページに解説が載っています。

兄が宇宙を直進して一周する時、双子のパラドックスはどうなる?

因みに、このページは上記双子のパラドックスについても解説しています。結論としては、「兄の方が若くなっている」ということです。私は、そのページの最後の図が理解できないので、腑に落ちないままです。

2019年12月13日 (金)

時間とエネルギーの不確定性

当ブログのファインマン図の内線 -3-(と言うか、ドレスト光子の相互作用)で、ドレスト光子が相互作用する途中でエネルギー保存則が破れるが物理に反している訳ではなく、その根拠として時間とエネルギーの不確定性を挙げました。しかし、実は、この不確定性は理論的に証明されてはいないそうです。下記の記事を参照ください。

私はあまり理解出来ていないので要約も出来ません。1つだけ次のことを理解しました:位置と運動量の不確定性はそれらの作用素の非可換性から導かれるが、それを時間とエネルギーの不確定性に当て嵌めようとしても、そもそも時間に対応する作用素は存在しないので、時間とエネルギーの交換子を考えることも妥当ではない。

時間とエネルギーの不確定性が証明される日が来るのかどうか判りませんが、これを否定する実験結果は現れないのではないかと思っています。知らんけど。