« 2019年12月 | トップページ | 2020年2月 »

2020年1月

2020年1月18日 (土)

私の相対論 -5-(ポアンカレ群)

\(-m^2\) によるポアンカレ群の分類

ポアンカレ群は時空の平行移動 \(a\) とローレンツ変換(回転) \(\varLambda\) で構成されます。それらのユニタリー表現を \(T(a)\), \(L(\varLambda)\) とします。このうちの平行移動 \(T(a)\) は \(T(a)T(b)=T(a+b)\), \(T(0)=1\) より

\[ T(a) = e^{ik_\mu a_\mu} \tag{1} \]

が判ります。ここに \(k_\mu\) はエルミート作用素です。ちょっと書き方が気持ち悪いのですが、 \(k_\mu\) が \(a_\mu\) に作用しているわけではありません。

ローレンツ変換と平行移動の間には式 (2) の関係が有ります。

\[ L(\varLambda)T(a) = T(\varLambda a)L(\varLambda) \tag{2} \]

これより、式 (3), (4) が得られます。

\begin{align} L(\varLambda)T(a)L(\varLambda)^{-1} &= T(\varLambda a) \\ &= \exp(ik_\mu\varLambda_{\mu\nu}a_\nu) \\ &= \exp[ia_\mu(\varLambda^{-1})_{\mu\nu}k_\nu] \tag{3} \\ L(\varLambda)T(a)L(\varLambda)^{-1} &= L(\varLambda)\exp(ik_\mu a_\mu)L(\varLambda)^{-1} \\ &= \exp[iL(\varLambda)k_\mu L(\varLambda)^{-1}a_\mu] \tag{4} \end{align}

(3)=(4) より式 (5) が得られます。

\[ L(\varLambda)k_\mu L(\varLambda)^{-1} = (\varLambda^{-1})_{\mu\nu}k_\nu \tag{5} \]

ローレンツ変換は長さを変えないことを考慮すると、式 (5) より式 (6) が得られます。

\begin{align} L(\varLambda)k_\mu k_\mu &= (\varLambda^{-1})_{\mu\nu}k_\nu L(\varLambda)k_\mu \\ &= (\varLambda^{-1})_{\mu\nu}k_\nu(\varLambda^{-1})_{\mu\rho}k_\rho L(\varLambda) \\ &= k_\mu k_\mu L(\varLambda) \tag{6} \end{align}

式 (6) および \(k_\mu\) は \(T(a)\) と可換であることより式 (7) が得られます。

\[ [k^2_\mu, L(\varLambda)] = [k^2_\mu, T(a)] = 0 \tag{7} \]

したがって、シューアの補題により既約表現において式 (8) が得られます。ここに \(\mathbf{1}\) は恒等作用素です。「-」は便宜上付けました(早い話 \(m\) は質量)。

\[ k_\mu k_\mu = -m^2\mathbf{1} \tag{8} \]

\(-m^2\) は \(k^2\) の固有値で、これが異なれば固有ベクトル(固有空間)も異なることから \(-m^2\) はポアンカレ群の既約表現を指定する1つのパラメータであることが言えます。この \(-m^2\) により既約表現は下記のタイプに分類出来ます。(符号は (- + + +))

  • [M]: \(-m^2<0\); \(\bar{k}_\mu=(\pm m,0,0,0)\) time-like
    • [M+]: \(\mathrm{sgn}(k_0)=1\); 粒子
    • [M-]: \(\mathrm{sgn}(k_0)=-1\); 反粒子
  • [0]: \(-m^2=0\); \(\bar{k}_\mu=(\pm 1,0,0,1)\) light-like
    • [0+]: \(\mathrm{sgn}(k_0)=1\)
    • [0-]: \(\mathrm{sgn}(k_0)=-1\)
  • [L]: \(-m^2=0\), \(k_\mu=0\); \(\bar{k}_\mu=(0,0,0,0)\) 真空
  • [T]: \(-m^2>0\); \(\bar{k}_\mu=(0,0,0,im)\) space-like

ローレンツ変換の分解

計算は省略しますが、ローレンツ変換は式 (8) のように分解することが出来ます。

\[ L(\varLambda)=Q(\varLambda, k)P(\varLambda) \tag{9} \]

ここに \(P(\varLambda)\) は式 (10) で定義される作用素です。

\[ P(\varLambda)|\bar{k}, \bar{\xi}\rangle = |\varLambda\bar{k}, \bar{\xi}\rangle \tag{10} \]

ここに \(\bar{\xi}\) は \(\bar{k}\) 以外のパラメーターで、気持ちはスピンです。また、 \(Q(\varLambda, k)\) は \(k_\mu\) と可換であることが省略した計算の中で判っています。

\(P(\varLambda)\) は式 (10) によって与えられ、 \(\bar{\xi}\) とは無関係なので、 \(Q(\varLambda, k)\) が決まればローレンツ変換のもとでの \(\bar{\xi}\) の振る舞いが判ることになります。その \(Q(\varLambda, k)\) を決定するために、ウィグナーによってリトルグループというものが導入されました。ポアンカレ群の既約表現は \(k_\mu\) の固有値 \(\bar{k}_\mu\) によって上記のタイプに分類されるわけですが、この \(\bar{k}_\mu\) を不変にするようなローレンツ変換の集合がリトルグループです。

そして、この先にリトルグループの計算という荒海が待っている訳ですが、それは省略して「私の相対論」はここで終了にしたいと思います。

私の相対論

特殊相対論に限って言うと、アインシュタインがどのように相対論を構成したのか私は知らないのですが、ミンコフスキーはアインシュタインの相対論を知って、それは時空の等長変換の理論であることを見抜きました。そしてウィグナーによってその等長変換すなわちポアンカレ変換の成す群が詳細に計算され、相対論的量子力学に応用されることになりました。これが、相対論に対する私の認識です。つまり、(特殊)相対論とはポアンカレ群の理論なのです。(「ポアンカレ群」と言うことは、ミンコフスキーよりもポアンカレの方が先に時空とその変換群を考えたということなのでしょうか?)

アインシュタインは当初、時空のアイデアには反対だったようですが、後に一般相対論を構築したということは、その頃には時空を受け入れていたのでしょう。

また、私にとっての一般相対論は不定計量のリーマン幾何学です。そのため、物理との対応を気にして来なかったのですが、今回、計量はどのように重力を表しているのかとか、重力波は何の波なのかということを調べてみました。(重力波については、重力波が初めて直接観測された頃に書きたかったのですが、手間取りそうだったのでパスしていました)

とにかく、相対論に対する私の認識(興味の方向)は、世間で言われているものとはズレていると思っています。天邪鬼な者としては本望です。

2020年1月 8日 (水)

私の相対論 -4-(重力場はゲージ場ではない??)

力を媒介するものは、大抵ゲージ場(接続)です。例えば QED の場合、微分 \(\partial_\mu\) が \(\partial_\mu - ieA_\mu\) に置き換えられることで光と荷電粒子との間に相互作用が導入されます。その時の\(A_\mu\) が光と言うゲージ場です。

では、重力の場合はどうでしょうか? 相対論の計量 \(g_{\mu\nu}\) も

\[ \partial_\mu \to \partial_\mu + g_{\mu\nu}\alpha^\nu \]

のような置き換えを満たすのでしょうか? いいえ、そんなことはありません。それでは、重力は仲間外れで、ゲージ場ではないということでしょうか?

計量 \(g_{\mu\nu}\) はゲージ場ではありませんが、この \(g_{\mu\nu}\) に一意に対応する接続(レビ・チビタ接続)が有ります。これについては、検索すれば幾つかヒットしますが、下記ページなどはどうでしょうか。

レビ・チビタ接続は相対論で馴染みの言葉で言うと、クリストッフェル記号に相当します。クリストッフェル記号 \(\Gamma^\mu_{\nu\iota}\) をゲージ場と呼んで良いのか、細かなことについては判りませんが、大きくは間違っていないと思います。この時、微分は式 (1) のような変更を受けることになります(\(V\) が任意階のテンソルについては省略)。

\[ \frac{\partial V_\mu}{\partial x^\nu} \to \frac{\partial V_\mu}{\partial x^\nu} - \Gamma^\iota_{\mu\nu}V_\iota \tag{1} \]

このクリストッフェル記号を計量 \(g_{\mu\nu}\) を用いて表すと式 (2) になります。

\[ \Gamma^\mu_{\nu\iota} = \frac{1}{2}g^{\mu\kappa}\left(\frac{\partial g_{\kappa\nu}}{\partial x^\iota} + \frac{\partial g_{\kappa\iota}}{\partial x^\nu} - \frac{\partial g_{\nu\iota}}{\partial x^\kappa}\right) \tag{2} \]

以上のように、 \(g_{\mu\nu}\) はゲージ場ではないが、ゲージ場(接続)との対応が取れることが判りました。すなわち、重力もゲージ場と見做すことが出来るわけです。これで、力はゲージ場によって媒介されるという信念を貫くことが出来ました。めでたしめでたし。

ところで、相対論で使われるクリストッフェル記号は下段の添え字に関して対称になっています。

\[ \Gamma^\mu_{\nu\iota} = \Gamma^\mu_{\iota\nu} \]

これは捩じれが無いことを意味しています(捩率0)。そこで、相対論に捩じれを導入したら、どのような変更をもたらすのかという疑問が出て来ます。それについては下記ページに少しだけ記述が有ります。四脚場というものを導入し、スピノルが扱えるようになるようです。

2020年1月 6日 (月)

私の相対論 -3-(一般相対論とニュートン重力との関係)

一般相対論は重力の理論と言われています。一方、ニュートン力学も天体同士に働く力(重力)を扱っています。そこで、両者の関係を見てみましょう。

計量とポテンシャル

ラグランジアン \(L\) を時間で積分したものは作用と呼ばれ、相対論では作用は世界間隔 \(ds\) を積分したものでもあります。

\[ S = \int Ldt = -\alpha\int ds \tag{1} \]

ここに \(\alpha\) は定数で、後で確定します。また、世界間隔 \(ds\) は次の式で与えられます。

\[ ds = \sqrt{-g_{\mu\nu}dx^\mu dx^\nu} \tag{2} \]

式 (2) の右辺に「-」が付いている理由は、よく判りません。たぶん、ルートの中が負になるのを嫌ったのでしょう。因みに、今回の符号は (- + + +) となっています。ちょっと横道に逸れますが、好みを言うと (+ - - -) で行きたかったのですが、参考にした本が (- + + +) なので、それに倣いました(符号を変えると間違えそうだから)。どうも、相対論では (- + + +) が主流のようです。

重力が無ければ式 (2) は

\begin{align} ds &= \sqrt{c^2dt^2 - d\boldsymbol{x}^2} \\ &= c\sqrt{1-\frac{v^2}{c^2}}dt \tag{3} \end{align}

となります。これを式 (1) に代入すると、式 (4) が求まります。

\begin{align} L &= -\alpha c\sqrt{1-\frac{v^2}{c^2}} \\ &\fallingdotseq -\alpha c + \frac{\alpha v^2}{2c} \tag{4} \end{align}

式 (4) の右辺第2項は非相対論的ラグランジアンに相当し \(mv^2/2\) となるべきものです。したがって \(\alpha=mc\) であることが分かり、ラグランジアンは式 (5) となります。

\begin{align} L &= -mc^2\sqrt{1-\frac{v^2}{c^2}} \\ &\fallingdotseq -mc^2 + \frac{mv^2}{2} \tag{5} \end{align}

式 (5) に弱い重力場 \(\phi\) を追加すると式 (6) になります。

\[ L = -mc^2 + \frac{mv^2}{2} - m\phi \tag{6} \]

これを式 (1) に代入すると \(ds\) と \(dt\) の関係が求まります。

\[ ds = \left(c - \frac{v^2}{2c} + \frac{\phi}{c}\right)dt \tag{7} \]

この両辺を2乗してから \(c\to\infty\) で \(0\) になる項を落とすと、式 (8) が求まります。

\[ ds^2 = (c^2 + 2\phi)dt^2 - d\boldsymbol{x}^2 \tag{8} \]

式 (2), (8) より計量テンソルの成分 \(g_{00}\) が求まります。

\[ g_{00} = -1 - \frac{2\phi}{c^2} \tag{9} \]

ポテンシャルの決定

上で計量とポテンシャルの関係が求まったので、次にそのポテンシャルの形を求めます。そのために場の方程式 (10) を計算します。

\[ {R^\mu}_\nu = -\frac{8\pi G}{c^4}\left({T^\mu}_\nu - \frac{1}{2}\delta^\mu_\nu T\right) \tag{10} \]

今は運動エネルギーが十分小さい状況を考えています。その場合、式 (10) においてエネルギー・運動量テンソルは式 (11) になります。

\[ T_{\mu\nu} = \rho c^2 u_\mu u_\nu \tag{11} \]

ここに \(u_\mu=dx_\mu/ds\) は4元速度で、 \(u^\mu u_\mu=-1\) を満たしています(単位ベクトルのようなもの)。 \(\rho\) は質量密度です。すなわち、式 (11) は静止エネルギーのようなものです。速度が小さいとしているので、 \(u_\mu\) の空間成分は無視し、時間成分だけが \(u_0=-u^0=-1\) として残ります。したがって式 (12), (13) が得られます。

\begin{align} {T^0}_0 = -\rho c^2 \tag{12}\\ T = {T^\mu}_\mu = -\rho c^2 \tag{13} \end{align}

式 (10), (12), (13) より式 (14) が得られます。

\[ {R^0}_0 = -\frac{4\pi G}{c^2}\rho \tag{14} \]

\(R_{00}\) は一方で式 (15) でも表されます。

\begin{align} R_{00} =& \frac{\partial\Gamma^\iota_{00}}{\partial x^\iota} - \frac{\partial\Gamma^\iota_{0\iota}}{\partial x^0} \\ &+ \Gamma^\iota_{00}\Gamma^\kappa_{\iota\kappa} - \Gamma^\kappa_{0\iota}\Gamma^\iota_{0\kappa} \tag{15} \end{align}

式 (15) の右辺第2項は \(x^0=ct\) での微分になっていますが、これは \(c\) で割ることになり、空間座標 \(x^i\) での微分に比べて小さくなるので、第2項は無視します。また、右辺第3, 4項も無視するようですが、これについては理由が判りません。とにかく、式 (15) は次式になります。

\[ R_{00} = \frac{\partial\Gamma^\mu_{00}}{\partial x^\mu} \tag{16} \]

\(\Gamma^\mu_{00}\) の計算も \(x^0=ct\) での微分を無視し、式 (9) も考慮すると式 (17) になります。

\begin{align} \Gamma^\mu_{00} &= \frac{1}{2}g^{\mu\nu}\left(\frac{\partial g_{\nu 0}}{\partial x^0} + \frac{\partial g_{\nu 0}}{\partial x^0} - \frac{\partial g_{00}}{\partial x^\nu}\right)\\ &= -\frac{1}{2}g^{\mu j}\frac{\partial g_{00}}{\partial x^j}\\ &= \frac{1}{c^2}g^{\mu j}\frac{\partial\phi}{\partial x^j} \tag{17} \end{align}

式 (16), (17) より

\[ {R^0}_0 = -R_{00} = -\frac{1}{c^2}\Delta\phi \tag{18} \]

式 (14), (18) より、ポテンシャル \(\phi\) の方程式が得られます。

\[ \Delta\phi = 4\pi G\rho \tag{19} \]

式 (19) を満たすポテンシャルで質量 \(M\) の粒子(質量密度 \(\rho\) が1点に集まったもの)の作るものは式 (20) となり、これはニュートンの重力であることが分かります(式 (6) でポテンシャル項は \(m\phi\) となっていることに注意)。

\[ \phi = -\frac{GM}{r} \tag{20} \]

« 2019年12月 | トップページ | 2020年2月 »