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2019年12月

2019年12月28日 (土)

私の相対論 -2-(重力波は何の波?)

基礎物理において「xx波」とは

\[ \Box\ \xi=0 \]

を満たす \(\xi\) を言います。例えば電磁波の場合、 \(\xi\) は電磁ポテンシャル \(A_\mu\) になります(電場 \(\boldsymbol{E}\) や磁場 \(\boldsymbol{H}\) も方程式を満たす)。では、重力波の場合の \(\xi\) は何なのか。その辺のところを確認して行きたいと思います。

重力場の方程式は式 (1) です。

\[ R_{\mu\nu} - \frac{1}{2}g_{\mu\nu}R = \frac{8\pi G}{c^4}T_{\mu\nu} \tag{1} \]

特に真空では式 (2) が成り立ちます。

\[ R_{\mu\nu}=0 \tag{2} \]

そこで、重力波が何なのかを見るため、真空中の弱い重力場の方程式を導くことにします。その状況のもとでは計量 \(g_{\mu\nu}\) はミンコフスキー計量 \(g^{(0)}_{\mu\nu}\) と小さな補正 \(h_{\mu\nu}\) で表すことが出来ます。

\begin{align} g_{\mu\nu} &= g^{(0)}_{\mu\nu} + h_{\mu\nu} \\ g^{\mu\nu} &= g^{(0)\mu\nu} - h^{\mu\nu} \tag{3} \end{align}

これを曲率テンソル

\begin{align} R_{\mu\nu\iota\kappa} = \frac{1}{2}&\left(\frac{\partial^2g_{\mu\kappa}}{\partial x^\nu\partial x^\iota} + \frac{\partial^2g_{\nu\iota}}{\partial x^\mu\partial x^\kappa}\\ - \frac{\partial^2g_{\mu\iota}}{\partial x^\nu\partial x^\kappa} - \frac{\partial^2g_{\nu\kappa}}{\partial x^\mu\partial x^\iota}\right)\\ &+ g_{\zeta\eta}(\Gamma^\zeta_{\nu\iota}\Gamma^\eta_{\mu\kappa} - \Gamma^\zeta_{\nu\kappa}\Gamma^\eta_{\mu\iota}) \tag{4} \end{align}

に代入し、 \(h_{\mu\nu}\) の1次より高い項を省略すると式 (5) になります。

\begin{align} R_{\mu\nu\iota\kappa} = \frac{1}{2}&\left(\frac{\partial^2g_{\mu\kappa}}{\partial x^\nu\partial x^\iota} + \frac{\partial^2g_{\nu\iota}}{\partial x^\mu\partial x^\kappa}\\ - \frac{\partial^2g_{\mu\iota}}{\partial x^\nu\partial x^\kappa} - \frac{\partial^2g_{\nu\kappa}}{\partial x^\mu\partial x^\iota}\right) \tag{5} \end{align}

これを式 (3) で縮約すると式 (6) が得られます。

\begin{align} R_{\nu\kappa} =& \ g^{\mu\iota}R_{\mu\nu\iota\kappa}\\ \fallingdotseq& \ g^{(0)\mu\iota}R_{\mu\nu\iota\kappa}\\ =& \frac{1}{2}\left(\frac{\partial^2{h^\mu}_\kappa}{\partial x^\nu\partial x^\mu} + \frac{\partial^2{h^\mu}_\nu}{\partial x^\kappa\partial x^\mu}\\ \ - g^{(0)\mu\iota}\frac{\partial^2h_{\nu\kappa}}{\partial x^\mu\partial x^\iota} - \frac{\partial^2h}{\partial x^{\nu\kappa}}\right) \tag{6} \end{align}

式 (3) において、 \(h_{\mu\nu}, h^{\mu\nu}\) は小さな補正という以外は具体的制限は課されていません。ここで式 (7) の制限を課すことにします。

\[ \frac{\partial{\psi^\mu}_\nu}{\partial x^\mu} = 0 \\ {\psi^\mu}_\nu = {h^\mu}_\nu - \frac{1}{2}\delta^\mu_\nu h \tag{7} \]

この制限によって、式 (6) は

\[ R_{\nu\kappa} = -\frac{1}{2}\Box\ h_{\nu\kappa} \tag{8} \]

となり、これは式 (2) より

\[ \Box\ h_{\nu\kappa} = 0 \tag{9} \]

となります。この方程式 (9) の解が重力波です。すなわち、重力波とは計量のことであるということが判りました。 LIGO は長さの変動を観測することで計量の変動を求めていることになります。

ところで、重力波はアインシュタインの最後の宿題とか言われていたようですが、それをニュートンの重力からは導けないものなのでしょうか? ブラックホールや中性子星が短周期で公転している時、そこから受ける重力が振動することから、それを重力波と言うことは出来ないのでしょうか? よく判らないので、これについては、そっとしておくことにします。

2019年12月25日 (水)

私の相対論 -1-(パラドックス)

相対論に対する私の認識は次のようなものです。

  • 特殊:ポアンカレ群(特にローレンツ群)の理論
  • 一般:リーマン幾何学(ただし、 1-3 の不定計量)

ただし、認識していると言っても、理解していると言えないのが残念なところです。かなり偏った認識なので、世間で話されている相対論の常識を最近まで必ずしも理解していませんでした。数年前に「100 分で名著」で相対論の回が有りましたが、そのとき納得したような事柄も有ります。そこで、勉強を兼ねて相対論について幾つかの話題をまとめてみようと思います。

今回は、相対論でのパラドックスについてです。なお、相対論では「××のパラドックス」と呼ばれている事例が有りますが、実際はそれらに矛盾は無いのでパラドックスと言うのは間違いです。が、慣例に倣ってパラドックスと呼ぶことにします。

宇宙線のパラドックス

ここに書いていることが宇宙線のパラドックスと呼ばれているかどうかは知りませんが、ここではそう呼ぶことにします。

宇宙線
パイ中間子
ミュー粒子
10~数十km

地球上空で大気に衝突した宇宙線は→中間子→ミュー粒子と変化して地上に到達します。ミュー粒子の到達までの時間はおよそ \(30\times 10^{-6}\sec\) です。しかし、ミュー粒子の寿命は \(2\times 10^{-6}\sec\) なので、途中で電子に変化するはずなのに、ミュー粒子のままで地上に到達します。この一見矛盾のように見えることも相対論で説明可能です。到達時間は \(30\times 10^{-6}\sec\) ですが、それは我々の時計での時間です。ミュー粒子は高速で飛翔しているので、地上到達までにミュー粒子にとっては寿命の \(2\times 10^{-6}\sec\) よりも短い時間しか経過していないのです。

いや、しかし、相対的に考えると、ミュー粒子から見れば我々の方の時間が遅くなり、ミュー粒子の時間は普通のままのはずです。上空から地上までの距離を移動するには寿命よりも長い時間が必要になるではないかと考えたくなります。しかし、ミュー粒子から見ると上空から地上までの距離はローレンツ収縮によって短くなり、そのため寿命内で到達出来るのです。高速で運動している物の時間が遅くなったり長さが短くなるのに気を取られて、その物体から見ると周りが縮むことを忘れがちになるので、矛盾していると勘違いしてしまいます。

双子のパラドックス

双子のパラドックスとは次のようなものです。双子の兄が宇宙旅行に行って帰って来た時、その兄は弟よりも若くなっています。しかし、相対的に見れば、弟の方が若くなっているとも考えられます。ここに矛盾が生じています。

この矛盾に対する説明でよく有るのは、旅行に行った兄は加速や減速(←これも加速のうち)をするので、兄の方が若くなり矛盾は生じないと言うものです。ところが、この加速度説に異を唱える意見が なぜこの宇宙ではウラシマ効果が起こるのか の中のコメントに有ります。それによると、地球に残っている弟には地球の重力 1G が常に掛かっているので、兄が同じ 1G の加速で旅行すると兄弟の時間経過は同じになるが、それは間違いだということです。

これについては一旦置いておいて、次の問題を考えます。

宇宙が球やトーラスのように閉じているとします。兄が宇宙を一周して地球に戻って来た時、弟よりも若くなっているか?

宇宙が閉じているので、兄は方向転換に伴う加速をすることなく地球に戻って来れます。それでも若くなっているのでしょうか?(出発と到着の加減速が無視できるかどうかは知りませんが)この問題に関して下記ページに解説が載っています。

兄が宇宙を直進して一周する時、双子のパラドックスはどうなる?

因みに、このページは上記双子のパラドックスについても解説しています。結論としては、「兄の方が若くなっている」ということです。私は、そのページの最後の図が理解できないので、腑に落ちないままです。

2019年12月17日 (火)

記事のタイトルのサニタイズ返し⇒例 <span class="sl_ft" style="font-weight:normal">FlatTable</span>

ココログは今年3月の改悪によって幾つかの機能を我々から奪いました。その1つに記事のタイトルに HTML タグを記述できなくなったというものが有ります。ビリヤードの配置図ソフト FlatTable は←のようなフォント(impact のイタリック体)で表記することにしています。それには HTML のタグが必要になります。これを記事のタイトルに入れることは、改悪前には可能でした。しかし、改悪後は、記事編集画面で HTML タグ入りのタイトルを入力しても、それがサニタイズされ、タグとしての機能が無効にされるようになりました。そのため、改悪以降に作成した記事では タイトル中の「FlatTable」 は 「FlatTable」 と表示されています。

しかし、 JavaScript を使うことで、この忌まわしいサニタイズに対してサニタイズ返しすることを思い付きました。本文中に下記コードを入れればOKです。

<script>
<!--
(function(){
    var subtitle = document.getElementsByClassName("entry-header");  // (1)
    if (subtitle.length == 0){  // (4)
        subtitle = document.getElementsByClassName("article-title");  // (1')
    }
    subtitle[subtitle.length-1].innerHTML = subtitle[subtitle.length-1].innerHTML.replace(/</g, "<").replace(/>/g, ">");  // (2)
})();
-->
</script>

記事タイトルにはクラス名として下記が与えられています。

  • entry-header :PC モード
  • article-header :ケータイモード

そこで (1), (1') のようにして、ページに表示されている記事タイトルの配列を獲得します。 (4) の判定条件は最初 (!subtitle) としたのですが、うまく行きませんでした。何故なら、 (3) で entry-header が無い時、 subtitle は空の配列になりますが、それは !subtitle == true を意味するものではないからです。

配列 subtitle の要素数はページの先頭から当該スクリプトの位置までのタイトル数です。つまり、当該スクリプトより後に配置されている記事の分は含まれません。すなわち、 subtitle[subtitle.length - 1] が修正したいタイトルになります(2)。

これで望み通りの表記で記事タイトルを表示することが出来るようになりました。(ただし、スマートフォンは impact がインストールされていないため、標準的なフォントで表示されます。)

それにしても、ココログは、何故タイトルをサニタイズするようになったのでしょうか? 本文中の HTML タグは有効(サニタイズされていない)なのでタイトルだけを警戒しても仕方ないと思うのですが・・・。

もう1つ愚痴を言わせてもらいます。上記スクリプトは必要に応じてコピペすることになります。その手間自体は大したことではありませんが、出来れば、スクリプトファイルを別途用意しておいて、それをロードするようにしたいところです。これもあの改悪によってファイルを用意することが出来なくなってしまいました。

2019年12月15日 (日)

時計コーナーの電波時計たち

先日、ショッピングモールの時計コーナーへ行って気付いたのですが、そこに陳列されている電波時計が全て同じ時刻を指していました。電波時計だから当たり前? いや、標準電波送信所の電波がショッピングモールの中まで届くとは思えません。まさか、1個1個時刻を合わせた訳でもないでしょう。不思議に思って店員に尋ねたら、館内で電波を発信しているとのことでした。

電波時計

そこで、調べてみたら、有りました。

これらは、インターネット経由で NTP(Network Time Protocol) サーバーから時刻を取得し、それを電波時計のフォーマットで送信する機器です。

また、次の所にも面白い記事が載っていました。

ところで、気掛かりなことが有るのですが、これらの機器を一般家庭で使う場合、機器から発信される電波と標準電波送信所から送信される電波が混信することはないのでしょうか? それとも、時計が良きに計らってくれるのでしょうか? 姑息な対応としては、使用する周波数を(最寄りの)標準電波送信所からの周波数とは違うものに設定することで混信を避けることは出来るでしょう。

インターネット経由という点に関しても気になることが有ります。時計を合わせるためにはリアルタイム性が必要でしょうが、インターネットはリアルタイム性を保証していないと思います。インターネットは経路が固定されていないので、サーバー・ユーザー間の遅延はアクセス毎に異なる可能性が有ります。また、インターネットではデータを紛失することも有るでしょう。そんなインターネットがリアルタイムである訳がありません。私の知識は古いのでしょうか? ただし、現実には、素朴に時刻を知るという要求を満たす程度の応答速度ならば問題無いでしょうが。

2019年12月13日 (金)

時間とエネルギーの不確定性

当ブログのファインマン図の内線 -3-(と言うか、ドレスト光子の相互作用)で、ドレスト光子が相互作用する途中でエネルギー保存則が破れるが物理に反している訳ではなく、その根拠として時間とエネルギーの不確定性を挙げました。しかし、実は、この不確定性は理論的に証明されてはいないそうです。下記の記事を参照ください。

私はあまり理解出来ていないので要約も出来ません。1つだけ次のことを理解しました:位置と運動量の不確定性はそれらの作用素の非可換性から導かれるが、それを時間とエネルギーの不確定性に当て嵌めようとしても、そもそも時間に対応する作用素は存在しないので、時間とエネルギーの交換子を考えることも妥当ではない。

時間とエネルギーの不確定性が証明される日が来るのかどうか判りませんが、これを否定する実験結果は現れないのではないかと思っています。知らんけど。

2019年12月 7日 (土)

字句解析・構文解析の本

コンパイラの理論の本

写真の本は上下2巻になっている訳ではありません。2冊とも同じ本です。初めに買っていた方が行方不明になったので、もう1冊買い直したのですが、だいぶ経ってから最初の本が見つかり、結局2冊になったという次第です。本のタイトルは「コンパイラの理論」で、字句解析・構文解析が解説されています。「文脈自由」とは?「LR」とは?・・・と、構文解析に興味を持つようになり、この本を読むようになりました。昔の話しですけど。

字句解析・構文解析の本には yacc などの使い方に重点を置いたものも有りますが、この本は字句解析・構文解析の一般論のみを展開しています。この本では次のような記述がそこここに見られます。

[定理 4.1] CF 文法 G=(N, Σ, P, S) に対して、 L(G) を受理する pda を構成できる。

[証明] この pda の構成を直観的に説明すると、文法 G の開始記号 S をスタックに置き、・・・

(注意) pda はプッシュダウンオートマトン。

まるで数学の本を読んでいるような気分になります。書店で目にする字句解析・構文解析の本では上記例のような記述はほとんど見ませんが、その業界の論文ではこの記述は普通なのでしょうか? まぁ、チューリングは数学屋だし、字句解析・構文解析も数学の一分野なのかも知れません。(チューリングはコンピューターに関わっていたということで名前を挙げました。字句解析・構文解析をやったかどうかは知りません)

この本を読んでいて、馴染みの薄い単語が一度に幾つも出て来るので、内容を把握するのに苦労しました。話しは逸れますが、数学には短期記憶が重要だと感じました。

2019年12月 5日 (木)

ディラック定数の表記 \(\hbar\) vs. \(\hslash\)

プランク定数を \(2\pi\) で割ったものはディラック定数と言うそうですが、そのディラック定数の記号に何か違和感を覚えていました。私の記憶ではディラック定数は「\(\hslash\)」なのですが、インターネットで見かけるのは「\(\hbar\)」ばかり。2つを良く見て下さい。横棒が微妙に違ます。記憶が間違っているのかと、幾つか本を調べてみたら以下のようになっていました。発行された年代によって傾向が有るような気もするのですが、未検証です。

  • \(\hbar\)
    • 量子力学(ランダウ・リフシッツ小教程)
    • 場の量子論(Umezawa)
    • ゲージ場の量子論入門(近藤慶一)
  • \(\hslash\)
    • 量子力学演習(コンスタンチネスキュ・マギアリ)
    • 場の量子論(中西襄)
    • 量子電磁力学(横山寛一)
    • 相対論的量子力学(西島和彦)

インターネットで \(\hbar\) が多いのは、ディラック定数は「えっちばー」と言われることも有るので hbar である \(\hbar\) になっているのかなぁと思っています。

2019年12月 3日 (火)

ファインマン図の内線 -3-(と言うか、ドレスト光子の相互作用)

-2- でナノ系での元来の相互作用が定義されたので、それをもとに初期状態と終状態がナノ系である相互作用 \(V_\mathrm{eff}\) を求めます。これを有効相互作用と言います。そのためにナノ系と巨視系から成る全系の関数空間を基底となる2つの空間 P, Q に分けます。空間 P はナノ物質 u, v の状態を表します。この時、有効相互作用は

\[ V_{\mathrm{eff}} = \langle\phi_\mathrm{Pf}|\hat{V}_{\mathrm{eff}}|\phi_\mathrm{Pi}\rangle \tag{1} \]

です。ここに \(\hat{V}_\mathrm{eff}\) は有効相互作用演算子、 \(|\phi_\mathrm{Pi}\rangle\) は空間 P の初期状態、 \(\langle\phi_\mathrm{Pf}|\) は空間 P の終状態です。 \(\hat{V}_\mathrm{eff}\) は -2- で示した元来の相互作用演算子 \(\hat{V}\) を用いて式 (2) で与えられます。

\begin{align} \hat{V}_\mathrm{eff} =& \sum_j\hat{P}\hat{V}\hat{Q}|\phi_{\mathrm{Q}j}\rangle \langle\phi_{\mathrm{Q}j}|\hat{Q}\hat{V}\hat{P}\ \\ & \times\left(\frac{1}{E^0_\mathrm{Pi}-E^0_{\mathrm{Q}j}}+\frac{1}{E^0_\mathrm{Pf}-E^0_{\mathrm{Q}j}}\right) \tag{2} \end{align}

ここに \(\hat{P},\ \hat{Q}\) は、それぞれ空間 P, Q への射影演算子です。 \(E^0_\mathrm{Pi}\), \(E^0_\mathrm{Pf}\), \(E^0_{\mathrm{Q}j}\) は各状態の固有エネルギーです。式 (1), (2) には \(V_\mathrm{eff}\) は初期状態 \(|\phi_\mathrm{Pi}\rangle\) から終状態 \(\langle\phi_\mathrm{Pf}|\) への遷移の間に中間状態 \(|\phi_{\mathrm{Q}j}\rangle\) を経由していることが表されています。

\(|\phi_\mathrm{Pi}\rangle\) はナノ系の物質 u, v の電子・正孔対(励起子)が励起状態 \(|u_\mathrm{ex}\rangle\), 基底状態 \(|v_\mathrm{g}\rangle\) にあり、巨視系には励起子ポラリトンが真空状態 \(|0_\mathrm{M}\rangle\) にある場合を考えます。すなわち

\[ |\phi_\mathrm{Pi}\rangle\ = |u_\mathrm{ex}\rangle|v_\mathrm{g}\rangle\otimes|0_\mathrm{M}\rangle \tag{3} \]

です。相互作用によりエネルギーが u から v へ移動する場合を考えると式 (3) の励起状態と基底状態が入れ替わったのが終状態となります。

\[ |\phi_\mathrm{Pf}\rangle\ = |u_\mathrm{g}\rangle|v_\mathrm{ex}\rangle\otimes|0_\mathrm{M}\rangle \tag{4} \]

エネルギー保存則により、空間 P の基底は式 (3), (4) のみで構成します。一方、空間 Q は P に含まれない多数の状態から成るので基底はエネルギー保存則を満たさない状態も含めて

\begin{align} |\phi_{\mathrm{Q}1n}\rangle =& |u_\mathrm{g}\rangle|v_\mathrm{g}\rangle\otimes|n_\mathrm{M}\rangle \tag{5} \\ |\phi_{\mathrm{Q}2n}\rangle =& |u_\mathrm{ex}\rangle|v_\mathrm{ex}\rangle\otimes|n_\mathrm{M}\rangle \tag{6} \end{align}

を考えます。ここに \(|n_\mathrm{M}\rangle\) は巨視系に励起子ポラリトンが \(n\) 個有る状態を表します。

この後かなりの計算を省略して有効相互作用は

\begin{align} V_\mathrm{eff}(\boldsymbol{r}) =& -\frac{\hbar^2}{(2\pi)^3\varepsilon_0} \sum^2_{\lambda=1}\sum^v_{\alpha=u}\int^\infty_0 (\boldsymbol{p}_u\cdot\boldsymbol{e}_\lambda(\boldsymbol{k})) \\ & \times(\boldsymbol{p}_v\cdot\boldsymbol{e}_\lambda(\boldsymbol{k}))f^2(k) \\ & \times\left(\frac{1}{E(k)+E_\alpha}+\frac{1}{E(k)-E_\alpha}\right) e^{i\boldsymbol{k}\cdot\boldsymbol{r}}d\boldsymbol{k} \tag{7} \end{align}

となります。ただし \(\boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}_u-\boldsymbol{r}_v\) です。更に計算を進めると式 (8) が得られます。

\begin{align} V_\mathrm{eff}(\boldsymbol{r}) =& -\frac{\hbar^2}{4\pi^2\varepsilon_0} \int^\infty_{-\infty}k^2dk f^2(k) \\ & \times\sum^v_{\alpha=u}\left(\frac{1}{E(k)+E_\alpha}+\frac{1}{E(k)-E_\alpha}\right) \\ & \times\left\{\boldsymbol{p}_u\cdot\boldsymbol{p}_v e^{i\boldsymbol{k}\cdot\boldsymbol{r}} \left(\frac{1}{ikr}+\frac{1}{k^2r^2}-\frac{1}{ik^3r^3}\right) \\ -\left(\boldsymbol{p}_u\cdot\frac{\boldsymbol{r}}{|\boldsymbol{r}|}\right) \left(\boldsymbol{p}_v\cdot\frac{\boldsymbol{r}}{|\boldsymbol{r}|}\right) e^{i\boldsymbol{k}\cdot\boldsymbol{r}} \\ \times\left(\frac{1}{ikr}+\frac{3}{k^2r^2}-\frac{3}{ik^3r^3}\right)\right\} \tag{8} \end{align}

この後の詳細な計算も省略して最終的に有効相互作用エネルギーとして式 (9) が得られます。

\[ V_\mathrm{eff}(\boldsymbol{r}) = -\frac{p_u p_v}{6\pi\epsilon_0} \sum^v_{\alpha=u}\left\{W_{\alpha+}(\Delta_{\alpha+})^2\frac{\exp(-\Delta_{\alpha+}r)}{r} \\ -W_{\alpha-}(\Delta_{\alpha-})^2\frac{\exp(-\Delta_{\alpha-}r)}{r}\right\} \tag{9} \]

ここに \(\Delta_{\alpha\pm},\ W_{\alpha\pm}\) は

\begin{align} \Delta_{\alpha\pm} &= \frac{1}{\hbar}\sqrt{\pm2m_\mathrm{pol}E} \tag{10} \\ W_{\alpha\pm} &= \frac{m_\mathrm{pol}\mathrm{c}^2}{m_\mathrm{pol}\mathrm{c}^2\pm E_\alpha} \tag{11} \end{align}

です。式 (9) の相互作用の結果、ナノ物質 \(\alpha\) で発生した励起子が放射緩和時間の後に伝搬光を発生するので、それが散乱光として遠方で観測されることになります。

式 (9) 右辺第1項は式 (3) で表される初期状態が式 (6) の中間状態(ただし \(n=1\))を経て式 (4) の終状態に至る遷移に起因しています(ここでは計算を省略しています)。

\begin{align} 初期状態 &: |u_\mathrm{ex}\rangle|v_\mathrm{g}\rangle\otimes|0_\mathrm{M}\rangle \\ \downarrow \\ 中間状態 &: |u_\mathrm{ex}\rangle|v_\mathrm{ex}\rangle\otimes|1_\mathrm{M}\rangle \\ \downarrow \\ 終状態 &: |u_\mathrm{g}\rangle|v_\mathrm{ex}\rangle\otimes|0_\mathrm{M}\rangle \\ \end{align}

「初期状態→中間状態」ではナノ系、巨視系ともにエネルギーが増加しており、エネルギー保存則を満たしていません。また、「中間状態→終状態」ではナノ系、巨視系ともにエネルギーが減少しており、これもエネルギー保存則を満たしていません。このような、保存則を満たさない遷移を媒介しているのがドレスト光子なのです。そしてこれはファインマン図の内線に相当しています。そこでは時間とエネルギーの不確定性

\[ \Delta t\Delta E\geq\hbar/2 \]

により(注意1)、このような遷移が可能となっています。なお、初期状態と終状態を比較すると、それらの間ではエネルギー保存則は満たされています。

(注意1):時間とエネルギーの不確定性は必ずしも証明されてはいないようです。

ところで、式 (9) の右辺第1項は湯川ポテンシャル

\[ \frac{e^{-\kappa r}}{r} \]

の型をしています。このポテンシャルは \(r\) の増加と共に急激に小さくなります。これはドレスト光子がナノ物質の表面近傍に局在することを意味しています。また、この湯川ポテンシャルはその名の示す通り、湯川秀樹が中間子を予言する時に導入したポテンシャルです。ドレスト光子の相互作用が中間子と同じ湯川型であることから、ドレスト光子も質量を持つことが推察出来ます。

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