« 2019年9月 | トップページ | 2019年12月 »

2019年11月

2019年11月25日 (月)

ファインマン図の内線 -2-(と言うか、ドレスト光子の相互作用)

「ドレスト光子」(大津元一)という本はドレスト光子のバイブルだと思っていますが、同じ著者の本で「これからの光学-古典論・量子論・物質との相互作用・新しい光-」というのも有るようです。その本の紹介文に次のような記述が有ります。

ドレスト光子はオフシェルの場と言える。もし、ナノ構造のように場の波長以下の小さな領域(特徴的サイズ; \(a\) )に場(光)が存在したら、ハイゼンベルグの不確定性原理により、運動量に \(\hbar/a\) 程度の不確定さが生じ、分散関係は幅をもつ。分散関係からはずれて存在するオフシェルの場は物質との相互作用を拠り所に存在しているが、ドレスト光子はこのようなオフシェルの光である。

先に書いた -1- での 「off-shell 状態と再結合とは関係が有るのか」という疑問は、上記紹介文から「yes」と考えて良さそうです。

さて、光の波長より小さな物質は「ナノ物質」、そのような系は「ナノ系」と呼ばれています。ここでは巨視系に囲まれた2つのナノ系の間の相互作用を見て行きます。「ドレスト光子」(大津元一)を参考にしました。

2つのナノ物質 u, v が巨視系 M に囲まれているとし、ここへ外部から光を入射します。入射光は巨視的物質中を伝搬した後ナノ物質 u, v に達し励起するので巨視系の基底に励起子ポラリトンを使います。この巨視系とナノ系の複合した系で u, v の間の有効相互作用を計算します。

u, v 間の元来の相互作用は電気双極子近似で式 (1) となります。

\[ \hat{V} = -\frac{1}{\varepsilon_0}\left( \hat{\boldsymbol{p}}_u\cdot\hat{\boldsymbol{D}}^\perp(\boldsymbol{r}_u) + \hat{\boldsymbol{p}}_v\cdot\hat{\boldsymbol{D}}^\perp(\boldsymbol{r}_v) \right) \tag{1} \]

ここに \(\hat{\boldsymbol{p}}_\alpha \ (\alpha=u, v)\) は電気双極子演算子です。 \(\boldsymbol{r}_\alpha\) はナノ物質 \(\alpha(=u, v)\) の位置を表します。 \(\hat{\boldsymbol{D}}^\perp\) は入射光の電気変位ベクトル(電束密度)の演算子の横方向成分です。

電子・正孔対の(励起子)の消滅、生成演算子を \(\hat{b}(\boldsymbol{r}_\alpha),\ \hat{b}^\dagger(\boldsymbol{r}_\alpha)\) 、電気双極子モーメントを \(\boldsymbol{p}_\alpha\) として、電気双極子演算子は

\[ \hat{\boldsymbol{p}}_\alpha = \left( \hat{b}(\boldsymbol{r}_\alpha) + \hat{b}^\dagger(\boldsymbol{r}_\alpha) \right)\boldsymbol{p}_\alpha \tag{2} \]

と表されます。

電気変位ベクトルは

\begin{align} \hat{\boldsymbol{D}}^\perp(\boldsymbol{p}) =& i\sum_\boldsymbol{k}\sum^2_{\lambda=1}N_k\boldsymbol{e}_{\boldsymbol{k}\lambda}(\boldsymbol{k}) \\ &\times\left( \hat{\xi}_{\boldsymbol{k}\lambda}(\boldsymbol{k})e^{i\boldsymbol{k}\cdot\boldsymbol{r}} - \hat{\xi}^\dagger_{\boldsymbol{k}\lambda}(\boldsymbol{k})e^{-i\boldsymbol{k}\cdot\boldsymbol{r}} \right) \tag{3} \end{align}

です。 \(\hat{\xi}_{\boldsymbol{k}\lambda}(\boldsymbol{k}),\ \hat{\xi}^\dagger_{\boldsymbol{k}\lambda}(\boldsymbol{k})\) は励起子ポラリトンの消滅、生成演算子です。

式 (2), 式 (3) を式 (1) に代入すると元来の相互作用演算子は式 (4) となります。

\begin{align} \hat{V} =& -i\sum^v_{\alpha=u}\sum_\boldsymbol{k}\sqrt{\frac{\hbar}{2\varepsilon_0V}} \left(\hat{b}(\boldsymbol{r}_\alpha) + \hat{b}^\dagger(\boldsymbol{r}_\alpha)\right) \\ &\times\left( K_\alpha(\boldsymbol{k})\hat{\xi}(\boldsymbol{k}) - K^\star_\alpha(\boldsymbol{k}){\hat{\xi}}^\dagger(\boldsymbol{k}) \right) \tag{4} \end{align}

ここに、 \(K_\alpha(\boldsymbol{k})\) は

\[ K_\alpha = \sum^2_{\lambda=1} (\boldsymbol{p}_\alpha\cdot\boldsymbol{e}_\lambda(\boldsymbol{k})) f(k)e^{i\boldsymbol{k}\cdot\boldsymbol{r}_\alpha} \tag{5} \]

です。ここで \(\boldsymbol{e}_\lambda(\boldsymbol{k})\) は光子の偏光方向を表す単位ベクトルです。式 (5) を得るには、光子の基底からポラリトンの基底への変換のごちゃごちゃした計算が必要ですが、省略します。

以上の準備のもとにナノ系の有効相互作用を求めます。-3- に続く。

2019年11月 9日 (土)

ファインマン図の内線 -1-

\(\gamma\)
\(e\)
\(\bar{e}\)
\(\gamma\)

かつて、右図のようなファインマン図を見て不思議に思っていたことが有りました。この図は左から右に流れると思ってください。左から入った光が電子と陽電子に分かれて、それらが再び合流して光となって右へ飛び去っています。ここで不思議なのは、(真空中で)電子や陽電子は曲がらないのに、なぜ再び合流できるのかということです。その答えは不確定性に有るということで私の中では納得しています。位置と運動量の不確定さには

\[ \varDelta x\cdot\varDelta p \geq\hbar/2 \tag{1} \]

の関係が有ります。そのため、図の電子と陽電子はこの不確定性の範囲内で再び合流出来るという訳です。

ところで、ファインマン図の内線は off-shell 状態になっています。このことと再結合とは関係有るのかという新たな疑問が湧いて来ました。

図において、光の部分は外線になっています。外線は on-shell 状態です。 on-shell 状態とは(4元)運動量と質量が \(p^2=m^2\) を満たしている状態を言います。エネルギーと運動量を分けて書くと

\[ E^2-\boldsymbol{p}^2=m^2 \tag{2} \]

になります。なお、光の場合は \(m=0\) です。

一方、図の電子および陽電子のような内線の部分は off-shell 状態になっています。すなわちエネルギーや運動量が式 (2) に束縛されません。このことは、内線に相当する部分は式 (3) のように伝播関数を運動量で積分することに対応しています。

\[ \frac{-i}{(2\pi)^4}\int dp\frac{m+\gamma p}{m^2-p^2 -i\varepsilon} \tag{3} \]

内線では、別れた粒子が再結合出来るのは、式 (3) のように運動量が積分変数として色々な値を取れるからという解釈で良いでしょうか。よく判りません。

この、内線が off-shell 状態というのはドレスト光子にとって本質的な役割を持っているようです。たぶん -2- に続く。

2019年11月 3日 (日)

昔読んでいた本をちょっと読み返してみた

ファインマン図の内線について調べたくて久し振りに「場の量子論」(中西襄)を開いてみました。最初の章は、この本を読むのに必要な予備知識を簡単に解説したもので、今回の目的からは逸れるのですが、パラパラと捲っているうちに結局その章を読み入ってしまいました。その章で解説されている項目は次のようになっています。

  1. 解析関数
  2. ベクトル空間
  3. 特殊相対論
  4. 量子力学
  5. 素粒子論

この章を読んだからと言ってこれらの予備知識が賄えるというものではありません。この章は場の量子論をやるにはこれらが必要だということの紹介であり、その内容は別途勉強しなければならないと考えるのが正しいでしょう。

当時この章を読んだ時は気にも留めなかったことで、今回目を引いた記述が2,3有りました。

1つ目は素粒子の寿命です。当時は、そういう定量的なものには興味が無く心の中でスルーしていましたが、今回は「へ~、10 の何乗か」「こっちはもっと小さいのか」と一々目を止めていました。

2つ目は、陽子や中性子などを素粒子と言ってることです。現在の素粒子論では陽子や中性子を素粒子とは考えていませんが、この本の執筆時は素粒子だったようです。因みにこの本は 1975 年の発行です。この他にも、ゲージ粒子は光子(および重力子)のみで、ウィークボソンには触れられていません。クォークも半信半疑といった記述です。

そして3っつ目は、ニュートリノの質量を「0であると信じられている」と言っていることです。勿論、ニュートリノに質量が有ることが判ったのは、この本よりもずっと後のことではありますが、0であると信じられていたというのは少々ショックです。ゲージ粒子の質量が0なのは分かりますが、質量0の物質(ハドロンやレプトン)が有ると考えるのはセンスが無いように思います。理論を構成する上で、ニュートリノの質量を0とした方が容易なので、とりあえずそうして様子を見るのは良いのですが、「本当は0じゃないんだろうな」と思ってほしいところです。

当初の目的であるファインマン図の内線絡みの勉強はあまり十分と言えず、その話題についてすぐにブログには出来ないので、このような駄文でお茶を濁してみました。

« 2019年9月 | トップページ | 2019年12月 »