カテゴリー「サイエンス」の4件の記事

2017年2月19日 (日)

光に質量を与えたい -2-

超伝導体内で光が質量を獲得する仕組みを知りたくて、インターネット上の資料を幾つか当たってみたのですが、未だ納得できるレベルに至っていません。取り敢えず、解った所をまとめておきます。

光の質量の獲得は秩序変数 \(\Delta\) に対する現象論(ギンツブルグ・ランダウ理論)として記述できます。秩序変数とは相転移を特徴付ける量で、考察の対象に応じて選択されます(秩序変数の超伝導相転移を参照)。この秩序変数を用いて、電磁場が無い時のラグランジアン密度は臨界点近傍で \[ \mathscr{L}=\Delta^*i\partial_t\Delta-\frac{1}{2m}\nabla\Delta^*\cdot\nabla\Delta +b|\Delta|^2+c|\Delta|^4 \tag{1} \] と表されます。ここに \(m\) はクーパー対の質量です。

(1) 式の微分を次のような共変微分に置き換えることで電磁場を導入します。 \[ \begin{eqnarray} \nabla \rightarrow \boldsymbol{D} = \nabla - i\tilde{e}\boldsymbol{A} \tag{2}\\ \partial_t \rightarrow D_t = \partial_t - i\tilde{e}\phi \tag{3} \end{eqnarray} \] すなわち、ラグランジアン密度は (4) 式になります。 \[ \begin{align} \mathscr{L} =& \Delta^*iD_t\Delta - \frac{1}{2m}\boldsymbol{D}\Delta^*\cdot\boldsymbol{D}\Delta\\ & + b|\Delta|^2 + c|\Delta|^4 + \mathscr{L}_\mathrm{em} \tag{4} \end{align} \] ここに \(\mathscr{L}_\mathrm{em}\) は電磁場のラグランジアン密度です。

\(\Delta = |\Delta|e^{i\theta}\) とおき、簡単のため \(|\Delta|\) が時間依存しないとします。そして \[ \begin{eqnarray} \tilde{\boldsymbol{A}} = \boldsymbol{A} - \frac{\nabla\theta}{\tilde{e}} \tag{5}\\ \tilde{\phi} = \phi - \frac{\partial_t\theta}{\tilde{e}} \tag{6} \end{eqnarray} \] を用いると、ラグランジアン密度は \[ \mathscr{L} = \tilde{e}|\Delta|^2\tilde{\phi} - \frac{\tilde{e}^2|\Delta|^2}{2m}\tilde{\boldsymbol{A}}^2 + \mathscr{L}_\mathrm{em} \tag{7} \] となります。このラグランジアン密度より \(\tilde{\boldsymbol{A}}\) の運動方程式は、 \(M=(\tilde{e}^2|\Delta|^2/(2m))^{1/2}\) とおいて、 \[ (\Box + M^2)\tilde{\boldsymbol{A}} = 0 \tag{8} \] となります。ただし、ローレンツゲージ \(\partial_\mu\tilde{A}^\mu = 0\) を仮定しました。 (8) 式は光子 \(\tilde{A}\) が質量 \(M\) を持っていることを表しています。

(1) 式から出発して光子が質量を獲得することが解った訳ですが、超伝導体のラグランジアン密度が (1) 式になることが理解できていません。 BCS の平均場理論によるとハミルトニアン \(H_\mathrm{mf}\) は \[ \begin{align} H_\mathrm{mf} =& -\mu c_i^\dagger c_i + c_i^\dagger t_{ij}c_j\\ & + \frac{1}{2}\langle c_i^\dagger c_j^\dagger\rangle V_{ijkl}c_k c_l + \frac{1}{2}c_i^\dagger c_j^\dagger V_{ijkl}\langle c_k c_l\rangle\\ & - \frac{1}{2}\langle c_i^\dagger c_j^\dagger\rangle V_{ijkl}\langle c_k c_l\rangle \tag{9} \end{align} \] で、 \(\Delta_{ij} = V_{ijkl}\langle c_k c_l\rangle\) が秩序変数になるのですが、これからラグランジアン密度 (1) 式の導き方が判りません。一般的にラグランジアン \(L\) とハミルトニアン \(H\) の間には \[ L = p\dot{q} - H \tag{10} \] の関係がありますが、これに (9) 式を適用するにはどうしたら良いのでしょうか。 (1) 式の質量 \(m\) は (9) 式ではどこに隠れているのでしょうか。

2016年12月 4日 (日)

光はとっくに質量を獲得していた

近接場光がきっかけで光が質量を獲得することに興味を持ち、光が質量を持つ模型という記事を見つけたことを、以前、当ブログの光に質量を与えたいで書きましたが、この「光が質量を持つ模型」よりもっと前から光は質量を獲得していたようです。その現象は超伝導体内部で発生しているそうです。超伝導体内部には光(電場も磁場も)は侵入できず、それは超伝導体内部で光が質量を獲得している表れであるということです。下記の記事に説明が有ります(PDF ファイル)。ただ、今ひとつ解った気になれませんけど。

質量の起源
対称性の自発的破れとヒッグス機構
南部理論と物性物理学

また、下記

ノート置き場

より「超伝導の基礎に関するノート」をクリックすると PDF 「超伝導の基礎に関するノート」がダウンロードされます。

超伝導体内部で光が質量を獲得する機構を、いづれ理解できたらまとめたいと思っています。

2016年3月13日 (日)

光に質量を与えたい

近接場光がきっかけで光が質量を獲得するということについて興味を持ち、色々検索したところ、 光が質量を持つ模型 という記事が見つかりました。ただし、近接場光についての言及は有りません。それによると、光が質量を獲得するあらすじは次のようになっています。

まず、グラショウ・ワインバーグ・サラム模型のラグランジアン密度は \[ \mathcal{L}_{GWS} = \mathcal{L}_{gauge} + \mathcal{L}_{Higgs} + \mathcal{L}_{lepton} + \mathcal{L}_{l-Higgs} \] で表されます。ここに

  • \(\mathcal{L}_{gauge}\) : ゲージ場に依る部分
  • \(\mathcal{L}_{Higgs}\) : ヒッグス場に依る部分
  • \(\mathcal{L}_{lepton}\) : レプトンに依る部分
  • \(\mathcal{L}_{l-Higgs}\) : レプトン・ヒッグス相互作用
です。ヒッグス場に依る部分は、 \[ \mathcal{L}_{Higgs} = (D^\mu \Phi)^\dagger D_\mu \Phi - U(\Phi^\dagger \Phi) \] となっています(\(D_\mu\) は共変微分)。ここに \(\Phi\) は2重項ヒッグス場で、 \[ \Phi(x) = \frac{v}{\sqrt 2}\left(\begin{matrix}0\\1\end{matrix}\right) + \phi(x)\\ \langle 0|\phi(x)|0\rangle = 0 \] と展開され、真空が対称性を破っています。ここまでが普通の理論です。

次に、1重項ヒッグス場 \(S(x)\) を導入して光に質量を与えることを考えます。1重項ヒッグス場のラグランジアン密度は \[ \mathcal{L}_S = (D^\mu S)^\ast D_\mu S - U_S(S^\ast S) \] で、全体のラグランジアン密度は \[ \mathcal{L} = \mathcal{L}_{GWS} + \mathcal{L}_S \] となります。極低温(宇宙背景輻射 3K よりも遥かに低い温度)が大域的に実現できれば1重項ヒッグス場は、 \[ S(x) = \frac{u}{\sqrt 2} + s(x)\\ \langle 0|s(x)|0\rangle = 0 \] となる可能性があるそうです。そして、いろいろ計算して、ラグランジアン密度の内、光子の2次の項の係数が \(0\) にならないことより、光が質量を獲得することが言えます。

以上は、宇宙が極めて低い温度になることで光が質量を獲得する可能性を示したものですが、これを、室温中に有る先の尖ったファイバースコープで実現すれば、近接場光の質量を説明できることになるのではないでしょうか。

2016年2月28日 (日)

近接場光

以前、サイエンスZeroか何かで見たと思うのですが、近接場光というものが有るそうです。ファイバースコープの先端を細く尖らせ、もう一方の端から光を入射させると、その光は尖らせた先端にまとわり付いたように留まったままになります。それが近接場光です。近接場光は先端から無限遠に飛んで行くことはありません(つまり、その光を直接見ることは出来ない)。この近接場光は顕微鏡(STMのようなもの)などへ応用されているようです。

ファイバースコープ この光は 直接見えるわけではない

ところで、ゲージ場のひとつである光は、真空中を無限遠まで移動することが出来ます。これは光に質量が無いことと同値です。それに対して、同じゲージ場でもウィークボソンは質量を持ち、到達距離は有限です(\(10^{-18}m\))。本来、ウィークボソンは質量0なのですが、自発的対称性の破れにより質量を獲得しているのです。

先に揚げた近接場光は、本来無限遠まで到達するはずの光が局所領域に束縛されている訳ですが、これはまるで光が質量を持ったようなものです。

光が質量を持つ。このことに興味を持ったので、近接場光について検索してみたのですが、詳しいことは分かりませんでした。(ただ、有効質量 \(m = \hbar/c \cdot \lambda_c\) をもつ仮想光子のトンネリングというアイデアが用いられているようです。)もし、先端を尖らせたファイバースコープが真空とは違ったポテンシャルになっていて、そのため対称性が破れて光が質量を獲得するというカラクリなら面白いのですが。