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2018年5月 5日 (土)

ある漸化式の一般項

YouTube で数学の大学入試問題を解説している動画が幾つも有り、そのうちの1つで扱っている問題に興味を持ったので、それについて書きます。動画は次の所に有ります。

YouTube の動画:横浜市立(医)漸化式

問題は、次の漸化式の一般項を求めよというものです。

\[ a_{n+2} - 5a_{n+1} + 6a_n - 6n = 0 \tag{1}\\ a_1 = a_2 = 1 \]

おそらく、動画でやっている方法が普通の解法だと思うのですが、ここでは、行列を用いてこの問題を解いてみることにします。

式 (1) において、 \(6n\) が無ければ、次の式 (2)

\[ \begin{pmatrix} a_{n+2}\\ a_{n+1} \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 5 & -6\\ 1 & 0 \end{pmatrix}^n \begin{pmatrix} a_2\\ a_1 \end{pmatrix} \tag{2} \]

で行列のn乗を計算すれば良いのですが、 \(6n\) が有るのでそう単純ではありません。ひと工夫必要になります。式 (1) を行列で表すと式 (3) になります。

\[\require{color} \begin{pmatrix} a_{n+2}\\ a_{n+1}\\ b_{n+1}\\ 1 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 5 & -6 & \textcolor{red}6 & 0\\ 1 & 0 & 0 & 0\\ 0 & 0 & 1 & 1\\ 0 & 0 & 0 & 1 \end{pmatrix}^n \begin{pmatrix} a_2\\ a_1\\ b_1\\ 1 \end{pmatrix} \tag{3} \]

この行列の右下部分

\[\begin{array}{cc} 1 & 1\\ 0 & 1 \end{array}\]

が工夫した箇所です。この部分は

\[ \begin{pmatrix} n+1\\ 1 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 1 & 1\\ 0 & 1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} n\\ 1 \end{pmatrix} \]

のように、特定の要素を 1 大きくする働きが有ります。したがって、初期値を適当に選べば、その要素は項番号と同じものになります。これと式 (3) の第1行3列の \(6\) とで \(6n\) の働きをさせることが出来ます。

さて、式 (3) の行列を \(A\) と置きます。 \(A\) のn乗を計算するために、 \(A\) を式 (4) のように分解します。

\[ A = PJP^{-1} \tag{4} \]

\(J\) は対角行列・・・にしたいところなのですが、今回の \(A\) は対角化出来ないのが悩ましいところです。とりあえず、なるべく対角行列に近いものに変形します( Jordan 標準形)。 \(A\) の特性方程式

\[ \det(x - A) = (x - 3)(x - 2)(x - 1)^2 = 0 \]

より、固有値は \(x = 3, 2, 1\) となります。これらの固有値に対応するベクトル \(\boldsymbol{p}_1, \boldsymbol{p}_2, \boldsymbol{p}_3, \boldsymbol{p}_4\) を並べると \(P\) が求まり、式 (5) になります(この辺りの計算が面倒です)。固有値 \(1\) は重複しているので、それに対応するベクトル(独立なもの)も2つ並べています。

\[ P = (\boldsymbol{p}_1 \boldsymbol{p}_2 \boldsymbol{p}_3 \boldsymbol{p}_4) = \begin{pmatrix} 3 & 2 & 6 & 18\\ 1 & 1 & 6 & 12\\ 0 & 0 & 2 & 1\\ 0 & 0 & 0 & 2 \end{pmatrix} \tag{5} \]

この時 \(J\) は式 (6) になります。

\[ J = \begin{pmatrix} 3 & 0 & 0 & 0\\ 0 & 2 & 0 & 0\\ 0 & 0 & 1 & 1\\ 0 & 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \tag{6} \]

以上より \(A^n\) が求まります。

\[\begin{align} A^n &= PJ^nP^{-1}\\ &= P \begin{pmatrix} 3^n & 0 & 0 & 0\\ 0 & 2^n & 0 & 0\\ 0 & 0 & 1 & n\\ 0 & 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} P^{-1} \end{align} \tag{7} \]

ここに \(P^{-1}\) は式 (8) となっています。

\[ P^{-1} = \frac{1}{4} \begin{pmatrix} 4 & -8 & 12 & 6\\ -4 & 12 & -24 & -24\\ 0 & 0 & 2 & -1\\ 0 & 0 & 0 & 2 \end{pmatrix} \tag{8} \]

そして、式 (3) で \(a_2 = a_1 = 1, b_1 = 1\) とおいて計算すると一般項は式 (9) となります。ただし、式 (9) で求まるのは \(a_{n+2}\) なので \(a_n\) に書き換えた方が良いかも知れません。

\[ a_{n+2} = \frac{1}{2}(7\cdot 3^{n+1} - 20\cdot 2^{n+1} + 6n + 21) \tag{9} \]

以上の方法は、連立方程式を解いたり、逆行列を求めたりと手間がかかるので、入試問題の解法としては適さないでしょう。その点で YouTube で示された方法が良いと思います。そもそも、ここで行った行列に関する操作は、高校の範囲を越えていますし。しかし、遷移行列という単純なアイデアで解いて行くところは気に入っています。

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