2017年12月10日 (日)

転がっている球はいつ止まる?

転がっている球は止まらない?

「ビリヤードで、転がっている球はいつ止まるのか?」以前から考えていました。最初に考えたのは以下のようなものです。しかし、たぶん、これは間違っていると思います。

\(\omega\)
\(v\)
\(\mu mg\)

台を転がる球の運動は、次の式で表されます。

\[ \begin{align} m\dot{v} &= \mu mg \tag{1-1}\\ I\dot{\omega} &= -\mu mgr \tag{1-2} \end{align} \]
 \(m\) :球の質量  \(v\) :球の速度  \(\mu\) :摩擦係数
 \(g\) :重力加速度 \(I\) :慣性モーメント(\(=2/5\cdot mr^2\))
 \(\omega\) :球の角速度 \(r\) :球の半径

摩擦係数 \(\mu\) は、球の進行方向に摩擦が働くときに正としています。したがって (1-1), (1-2) のような符号になっています。図では摩擦が右向きに描かれており (1-1) は一見、加速しているように見えますが、 \(\mu\) が負のとき摩擦は左向きに働くことになります。また、右向きに摩擦が働くと回転は減少します。

(1-2) は慣性モーメントに \(2/5\cdot mr^2\) を代入すると次の (1-2') になります。

\[ \frac{2}{5}r\dot{\omega} = -\mu g \tag{1-2'} \]

球の転がりに滑りが無い時は、\(v = r\omega\) が成り立ちます。そこで、 \(v - r\omega\) を計算します。まず (1-1), (1-2') より、

\[ \dot{v} - r\dot{\omega} = \frac{7}{2}\mu g \tag{1-3} \]

これを時間で積分すると (1-4) になります。

\[ v - r\omega = \frac{7}{2}\mu gt \tag{1-4} \]

ただし、\(t = 0\) で \(v - r\omega = 0\) としました(つまり、初期条件として、球の転がりに滑りは無いとした)。

(1-4) で、\(\mu > 0\) とすると、\(v > r\omega\) となります。即ち、球の速度に比べて、回転は遅くなります。その場合、摩擦は球の進行の逆方向に働きます。これは \(\mu < 0\) を意味します。つまり、初期状態で \(\mu > 0\) でも、瞬間的に \(\mu < 0\) に変わります。

(1-4) で \(\mu < 0\) とすると、\(v < r\omega\) となります。即ち、球の速度に比べて、(前方)回転は速くなります。その場合、摩擦は進行方向に働きます。これは \(\mu > 0\) を意味します。つまり、初期状態で \(\mu < 0\) でも、瞬間的に \(\mu > 0\) に変わります。

このように、転がりに滑りが無い球は、 (1-4) の \(\mu\) を確定出来ず、計算を実行出来ません。唯一 \(\mu = 0\) の時だけ (1-4) は計算可能ですが、これは摩擦が無いことを意味し、球は永久に転がり続けるという、つまらない解になります(私の知りたいのは、球はどのくらい転がった後に止まるのかということです)。

これなら止まります

上記のおかしな結果は (1-1) が原因ではないかと思っています。 (1-1) は、移動する物体が直方体のような転がらないものの場合には成り立ちますが、球の場合は成り立たないのかも知れません。

そこで (1-1) を仮定しないで計算を進めることにします。 (1-2') より、

\[ r\dot{\omega} = -\frac{5}{2}\mu g \tag{2-1} \]

が得られます。球の転がりに滑りが無い(\(v = r\omega\))とすると (2-1) は

\[ \dot{v} = -\frac{5}{2}\mu g \tag{2-2} \]

となります。これを積分して、転がっている球が停止するまでの時間が分かります。

ある書籍での解法

「ビリヤードの解析とシミュレーター」という書籍には (2-2) と異なる結果が載っていました。それは次のようなものです。

その書籍では、球に作用する力を、併進速度を減少させる力 \(F_1\) と回転速度を減少させる力 \(F_2\) に分けて扱い、その合計が摩擦力 \(\mu mg\) になるとしています。

\[ F_1 + F_2 = \mu mg \tag{3-1} \]

\(F_1\), \(F_2\) は次の方程式を満たします(\(v = r\omega\) を仮定)。

\[ \begin{align} F_1 &= -m\dot{v}\\ F_2 &= -\frac{I}{r}\dot{\omega}\\ &= -\frac{2m}{5}\dot{v} \end{align} \]

\(F_1\) と \(F_2\) の比を取ると、

\[ \frac{F_1}{F_2} = \frac{5}{2} \tag{3-2} \]

となります。これと (3-1) より、次の (3-3), (3-4) が得られます。

\[ \begin{align} F_1 = \frac{5}{7}\mu mg \tag{3-3}\\ F_2 = \frac{2}{7}\mu mg \tag{3-4} \end{align} \]

即ち、併進の方程式は

\[ m\dot{v} = -\frac{5}{7}\mu mg \tag{3-5} \]

となり、これを積分して、転がっている球が停止するまでの時間が分かります。

私には (3-1) が納得出来ないので (3-5) が正しいか疑問ですが、 (2-2) が正しいと言い切る自信も有りません。

2017年11月23日 (木)

Chrome での Flash 版 FlatTable

Flash はジョブズの陰謀や脆弱性のため、インターネットから締め出されつつあります。 Chrome でも、表示の許可を確認するようになっています。それのみならず、 Flash ファイル(*.swf)にアクセスしてもダウンロードの許可を聞いてくるだけで、画面表示してくれません(HTML ファイル(*.html)へ埋め込んだ Flash は表示します)。もしかしたら、他のブラウザでも同様の現象が起きているかも知れませんが未確認です。

そこで、 Flash 版 FlatTable を表示する HTML ファイルを Chrome 用に用意しました。以下がそのページへのリンクです。 Chrome を使用している方はこれをご利用下さい。なお、 SVG 版は直接アクセスしても問題ありません。

FlatTable_P(Flash 版)
FlatTable_C(Flash 版)

これらのページは次のような簡単なものです(プール用の場合)。


<!DOCTYPE html>
<html>
<head>
    <title>FlatTable_P</title>
    <link rel="shortcut icon" href="favicon.ico" />
    <style>
        html, body {height: 98%}
    </style>
</head>

<body>
    <object data="FlatTable_P.swf" width="100%" height="100%">
    </object>
</body>
</html>

上記コードで赤字部分が無いと object タグの height="100%" が有効になりません。また、 98% なのは、 100% ではスクロールバーが表示されるので、それを抑えるためです。

2017年10月18日 (水)

Mathjax が サーバー変更してバージョン指定が煩わしい

ちょっとタイミングを外した話題ですが、 Mathjax の CDN (Content Delivery Network) は今年4月に終了しています。現在は

https://cdnjs.cloudflare.com/ajax/libs/mathjax/バージョン/MathJax.js?config=TeX-AMS_HTML

を利用することになっています。ここにバージョンは MathJax のバージョンです。なお、 XyJax との相性の関係で config は TeX-AMS_HTML にしています。

終了の情報は4月上旬に知っていたのですが、設定は暫くそれまで通りにしておき、数式の整形がエラーになるのを確認してから設定変更することにしていました。しかし、何か月も表示が正常なままなので不思議に思っていたら、今までのサーバーを指定しても、上記サーバーにリダイレクトしているとのことでした。いつまでもリダイレクトという訳にも行かないだろうから、今は上記サーバーに変更しています。

ところで、今までのサーバーだと、 MathJax のバージョンは latest にしておけば自動的に最新バージョンに対応してくれていたのですが、現行のサーバーだと、バージョンを明確に指定しなくてはなりません。サーバーが変更になった時点では、バージョンが 2.7.0 だったのが、現在は 2.7.2 になっています。その都度、アクセス先を修正するのは面倒です。困ったものです。

2017年9月17日 (日)

光に質量を与えたい -3-

超伝導体内で光が質量を獲得することについて、あれこれ検索していたところ
Anderson-Higgs-Kibble 機構の検証と超伝導 Interlayer Coupling 機構の解明
が見つかり、たいへん参考になりました。上記文献は

超伝導現象がゲ-ジ場の対称性が自発的に破れることによって発現し、それに伴ってゴ-ルドスト-ンモ-ド (Goldstone mode) が発生するが、これを実験的に観測しようとする
ことについての報告書ですが、研究の背景と動機について書かれた部分に、光が質量を獲得する仕組みが解説されています。それを参考に質量の獲得についてまとめてみます。

ラグランジアンから始めるのが理論的には美しい(と思う)のですが、ラグランジアンというものは訳が分からず、いきなり定義するのは困難なものなので、エネルギー(ハミルトニアン)から始めることにします。

クーパー対 \(\psi(\boldsymbol{q})\) が電磁相互作用している系のハミルトニアン \(H\) (およびハミルトニアン密度 \(\mathscr{H}\))は次のようになります。 \[\begin{align} H =& \int \mathscr{H}d\boldsymbol{q}\\ \mathscr{H} =&\ \psi^\dagger(q)\frac{1}{2m}\left(\boldsymbol{p}-\frac{e}{c}\boldsymbol{A}(\boldsymbol{q})\right)^2\psi(\boldsymbol{q})\\ &+ V(\psi^\dagger(\boldsymbol{q})\psi(\boldsymbol{q})) + \frac{1}{8\pi}(\boldsymbol{E}^2+\boldsymbol{B}^2) \tag{1} \end{align}\] 第1項から判るように、クーパー対は非相対論的に扱っています。超伝導体内部では静電場は存在しないので \[\begin{align} A_0 &= 0\\ \boldsymbol{E} &= -\frac{1}{c}\frac{\partial\boldsymbol{A}}{\partial t} \tag{2} \end{align}\] と取ることが出来ます。また、相互作用項(注1) \(V(\psi^\dagger(\boldsymbol{q})\psi(\boldsymbol{q}))\) は今の問題には関与しないので省略できます。

(注1):今回参考にしている文献では \(V(\psi^\dagger(\boldsymbol{q})\psi(\boldsymbol{q}))\) を相互作用項と呼んでいるのですが、式 (1) で相互作用は第1項の \(\psi\) と \(\boldsymbol{A}\) の積から成る部分ではないかと思うのですが・・・。

クーパー対は基底状態からの励起として南部・ゴールドストーンモードの励起が有るとして、 \[ \psi(\boldsymbol{q}) = \sqrt{n_0}e^{i\theta(\boldsymbol{q})} \tag{3} \] と置くとハミルトニアン密度は \[ \mathscr{H} = \frac{\hbar^2 n_0}{2m}\left(\operatorname{grad}\theta-\frac{e}{c\hbar}\boldsymbol{A}\right)^2 + \frac{1}{8\pi}(\boldsymbol{E}^2+\boldsymbol{B}^2) \] となります。 \(\boldsymbol{B} = \operatorname{rot}\boldsymbol{A}\), \(\operatorname{rot}\operatorname{grad}\theta = 0\) なので、 \(\operatorname{grad}\theta - (e/c\hbar)\boldsymbol{A} \longrightarrow \boldsymbol{A}'\) と置き換えてもハミルトニアン密度は変わりません。その \(\boldsymbol{A}'\) を改めて \(\boldsymbol{A}\) と置くとハミルトニアン密度は \[ \mathscr{H} = \frac{n_0e^2}{2mc^2}\boldsymbol{A}^2 + \frac{1}{8\pi}(\boldsymbol{E}^2 + \boldsymbol{B}^2) \tag{4} \] となります。

以下、簡単のため微分を次のように表記することにします。 \[ A_{\mu,\nu} \equiv \frac{\partial A_\mu}{\partial x_\nu} \] また、添字が上か下かということについては区別しないことにします。

さて、このハミルトニアン密度からラグランジアン密度 \(\mathscr{L}\) を求めます。両者には \[ \mathscr{L} = \pi_i A_{i,0} - \mathscr{H} \tag{5} \] の関係が有ります。ここに \(\pi\) は運動量密度です。ハミルトン形式では運動量(密度)は先に決めておくものなのですが、式 (4) でどれが運動量密度なのかよく判りません。これでは式 (5) が計算できません。上記文献ではラグランジアン密度は \[ \mathscr{L} = -\frac{n_0e^2}{2mc^2}\boldsymbol{A}^2 + \frac{1}{8\pi}(\boldsymbol{E}^2 - \boldsymbol{B}^2) \tag{6} \] と記されているので、取り敢えず式 (6) から運動量密度を計算してみました(式 (2) を考慮)。 \[\begin{align} \pi_i &= \frac{\partial\mathscr{L}}{\partial A_{i,0}}\\ &= \frac{1}{4\pi c^2}A_{i,0} \end{align}\] これを使って式 (5) を計算すると式 (6) になることは確認できました。そこで、ラグランジュ方程式 \[ \frac{\partial}{\partial x_j}\frac{\partial\mathscr{L}}{\partial A_{i,j}} - \frac{\partial\mathscr{L}}{\partial A_i} = 0 \] を計算すると(\(\boldsymbol{B}=\operatorname{rot}\boldsymbol{A}\) を考慮) \[ \left(\Box + \frac{4\pi ne^2}{mc^2}\right)\boldsymbol{A} = 0 \tag{7} \] が得られます(\(\Box\) の符号は (+,---))。この式は光 \(\boldsymbol{A}\) が質量 \(4\pi ne^2/(mc^2)\) を持つことを表しています。なお、式 (7) の算出に当たり、クーロン・ゲージ \(\operatorname{div}\boldsymbol{A}=0\) を用いました。

今回の過程を見ると、クーパー対 \(\psi(\boldsymbol{q})\) を式 (3) と置いたことで式 (6) の第1項が得られ、それが式 (7) の質量項になっていることが解ります。光の質量獲得のカラクリが少し理解できた気になりました。

ところで、電磁気というやつは単位系に幾つか流儀が有って、その確認に手間取りました。電磁気の単位系について便利なページが有ったのでリンクを張っておきます。
電磁気学の種々の単位系

2017年8月19日 (土)

魚の模様の出来る仕組み

魚の模様の出来る仕組みについて、何年か前にサイエンス Zero で見たことがあったのですが、その仕組みがどうだったか忘れていました。録画していたわけでもないので、再度確認出来ずにいたのですが、先日、その番組を見ることが出来ました。今度は忘れないように、ここにメモしておきます。

タテジマキンチャクダイの写真

その番組では、タテジマキンチャクダイの縞模様について説明が有りました。タテジマキンチャクダイは、体が成長すると縞模様の本数が増えて縞の間隔が一定に保たれます。その仕組みは、色素の活性化因子と抑制因子によって説明出来ます。


まず、縞模様の形成は次のようになっています。

  1. 細胞は色素の活性化因子を生成する。
  2. その活性化因子は細胞に更に活性化因子を生成するよう働きかける。
  3. 活性化因子は細胞に抑制因子も生成するよう働きかける。(活性化因子が無いと抑制因子は生成されない)
  4. 2 種類の因子は周りの細胞に拡散する。
  5. その拡散速度は抑制因子の方が速い。
  6. 着色された細胞から少し離れた所は抑制因子の方が多くなり、着色されない。

このようにして出来た縞模様は、身体の成長により間隔が広がります。すると、着色された細胞からある程度離れた個所には抑制因子が届かず、その箇所の細胞が着色されます。こうして、身体が成長しても縞の間隔が一定に保たれるという訳です。

A B C 活性化因子 抑制因子 活性化因子 抑制因子

図を用いて説明します。細胞 A と C は着色されているとします。それらから発生した抑制因子が活性化因子より早く色素細胞 B に到達すると B は着色されません。これにより、縞が形成されます。そして、 A と C の間隔が広がり、抑制因子が B に到達しなくなると、 B の生成する活性化因子により B は着色され、その結果、縞の間隔が一定に保たれることになります。

実は、2 種類の因子で模様を形成する仕組みは、チューリングによって方程式が与えられています。それが次式です。
\[ \left\{ \begin{aligned} \frac{dX_r}{dt}&=f(X_r,Y_r)+\mu(X_{r+1}-2X_r+X_{r-1})\\ \frac{dY_r}{dt}&=g(X_r,Y_r)+\nu(Y_{r+1}-2Y_r+Y_{r-1}) \end{aligned} \right. \] \(X, Y\) がそれぞれ活性化因子と抑制因子です。添え字 \(r\) は細胞を示す番号です。 \(f, g\) などを具体的に決めて計算すると、縞模様の形成の様子をシミュレートすることが出来ます。

ところで、上記方程式は 1 次元についてしか言っていないように思うのですが、これで 2 次元もカバー出来ているのが不思議です。

番組では、縞模様の形成の他にも、肺の形成や細胞性粘菌の集団の振る舞いなどが紹介されていましたが、ここでは省略します。

魚の模様の出来る仕組みについて、目がテンでも放送されたことが有るようです。 目がテン!ライブラリー 生き物(模様)の科学 に解説が掲載されています。

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